食い違う米中の会談要旨

米中間の力学は中国側へと緩やかに傾きつつあるのだろうか。会談後の公式発表を見比べれば、その傾向が端的に読みとれる。

両国がそれぞれ公表した会談要旨は、同じ首脳会談の記録でありながら、中身はまるで別の会議について書かれたかのように食い違っている。

ホワイトハウスが発表した米側の会談要旨(リードアウト)は、わずか4つの議題に絞られていた。経済協力の拡大、中東の原油輸送路であるホルムズ海峡の開放を維持すること、イランに核兵器を持たせないことと、そしてアメリカで薬物問題を引き起こしている合成麻薬のフェンタニル対策だ。

中国側の発表は、内容がまるで違った。

米CNNによると中国側は、両首脳は「建設的な戦略的安定関係」という新たな概念を今後3年以上にわたる米中関係の指針として確立することで合意した、と発表している。

平たく言えば、協力を両国関係の土台に据え、競争は制御できる範囲にとどめ、先の読める平和をめざす構想だ。外交の場でこの用語が使われたのは、今回が初めてである。米側の要旨に、この概念への言及はない。

米側発表は台湾に一切触れていない

NBCニュースによると、習氏は貿易戦争にも触れ、「勝者はいない」と明言したという。アメリカが仕掛けた関税合戦への牽制だ。

台湾問題では、両国はいっそう深く食い違っている。

習氏は台湾の扱いを誤れば、「衝突、さらには紛争を引き起こし、両国関係全体を重大な危機にさらす」とトランプ氏に警告したと、NBCニュースは報じている。「紛争」という言葉まで持ち出した、踏み込んだ警告だ。

一方のトランプ氏は、台湾が議題に上ったかどうか繰り返し問われても、回答を避けた。

台湾の形の青天白日満地紅旗をはさんで、五星紅旗と星条旗が両にらみ
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ニューヨーク・タイムズは、習近平氏が台湾に対するアメリカの支持を後退させることを最優先の課題に据えていると指摘する。事実、トランプ政権は130億ドル(約2兆500億円。5月14日現在のレート、1ドル157.82円で換算、以下同)規模の台湾向け武器売却の公表をすでに延期した。

習近平氏に好かれるために、最も重要な安全保障上の課題の一つから目を逸らす。トランプ氏の弱みがここでもにじみ出ている。