会談のたび身動き取れなくなるトランプ
首脳会談を通じ、どちらが優位に立っているかは明白になりつつある。
問題は、この先だ。トランプ氏が誤算を重ねたその先に何が待つのか。今後の外交日程のなかで、その答えは否応なく明らかになるだろう。
米シンクタンクの外交問題評議会は明快に分析している。この首脳会談で両者が求めるものは、根本から釣り合っていないのだ、と。
中国が狙うのは、技術・産業基盤を固めるための時間稼ぎだ。かたやアメリカが追い求めるのは、中国によるボーイング機の購入や大豆の輸入合意といった目先の成果にすぎない。
11月に中間選挙を控えたトランプ氏としては、ぜひ手にしたい外交成果だ。だが、中国にしてみれば、時間さえ稼げるなら喜んで差し出せる程度の手土産にすぎない。
しかも、この先にはAPEC(深圳)、G20(マイアミ)、そして習氏の国賓訪米と、少なくとも3度の首脳会談が控えている。外交問題評議会が警告するのは、中国がこの過密な外交日程を、そのまま手札として使いかねないという点だ。
習近平が目論む「東が昇り西が沈む」
中国がこうした場で「米中関係の安定」を大義名分に掲げれば、アメリカは、中国の台頭に対抗するための対中競争措置を先送りせざるをえなくなる。会うたびに、トランプ政権は身動きが取りにくくなっていく。
アジア・ソサエティ政策研究所のウェンディ・カトラー上級副所長は米ブルームバーグに対し、中国が一連の行動に出ているのは、「自信の表れ」だと指摘した。もはやアメリカの出方を恐れていないという意味だ。
元米通商交渉担当官でもある同氏は、アメリカ側から目立った反発がない一因としてイランとの戦争を挙げる。トランプ氏はイランに関心を奪われ、対中問題に割く余裕を失っているとの分析だ。
中国には、すでにアメリカに譲歩を迫った実績がある。
昨年4月と10月、習氏がレアアースや磁石の供給制限をちらつかせた際、トランプ氏は対中関税の大幅引き下げなどで折れた。トランプ氏がこうした誤算を重ねた結果、北京は「脅せばアメリカは退く」と学んでいる。
外交問題評議会のラッシュ・ドーシ上級研究員(元バイデン政権の国家安全保障会議で中国・台湾・モンゴル担当部長を務めた)によれば、習氏は党幹部に「東が昇り西が沈む」と語り続けてきたという。時代の勢いは中国に味方しているのだ、と。
安全保障面も含め、日本を含めたアジア圏での影響力拡大が懸念される中国。だが、首脳会談を終えた今、習近平氏の確信を揺るがす材料は、まだ見つかっていない。


