「ささやかな達成感」の積み重ね

ぼく自身が何かしたわけではない。その子の周囲にある療育・教育の力で伸びていったということだろう。いや、その子自身の力で伸びていったというのが正解かもしれない。ぼくはただ見守っていただけだ。でも、もしかしたら、ぼくがこの子を見守り続けたことが、ご家族にとって少しは勇気になったかもしれない。そうであればうれしい。

ぼくがこの子を伸ばしたわけではないので、ぼくが達成感を得たと言ったら、言い過ぎかもしれない。でも、この子の成長の記録をカルテに刻んで、子の成長をご家族と一緒に喜ぶことができたので、ぼくにはささやかな達成感がある。小さなことかもしれないけれど、こうした日々の積み重ねが開業医のやりがいなんだと思う。

人生の根が深くなっていく

この世には、大きな使命感や義務感を背負って大きな仕事をする人もいれば、小さなやりがいをいくつも手に持って地道に仕事をする人もいる。どちらも立派なことで、最終的には優劣はない。

松永正訓『60歳からの人生を変える22の発想』(小学館新書)
松永正訓『60歳からの人生を変える22の発想』(小学館新書)

ビッグビジネスをやっている人なんか一握りで、多くの方は毎日の仕事をコツコツと確実にこなしているというのが実際だろう。でもそういう日常の中に、小さな達成感がある。そしてそれを継続することで、人生の根は深くなっていくはずだ。

だから、目の前の小さな達成感、ほんのささいな達成感を大事にしようではないか。あとになって振り返ってみると、そこには大きな足跡がついているはずだ。

60歳を過ぎても、まだ点の一つ一つは刻める。ぼくも毎日、点を打っていこうと思う。みなさんもぜひやってみてほしい。小さな点の蓄積が、人生を生きた証になり、充実感につながるだろう。そういう生き方は、絶対に価値がある。

コメントby SERENDIP

本書の「おわりに」で著者は、この本をまとめるキーワードの一つに「時間」を挙げ、「時間……この怪物みたいなものを飼いならせば、60歳からの人生は勝ちである」と述べている。たとえばダラダラとYouTubeなどを見続けるといった無駄な時間を過ごすのを避ける。一方で時間管理を厳密にやり過ぎると、仕事や人生を楽しむことがかなわないだろう。そこで、「焦らない」ことも大事なのではと思う。ある程度の時間管理とその成功体験は自信につながり、焦りを軽減する効果もあるだろう。これまで積み重ねてきた経験を財産にして、心に余裕を持ちながらチャレンジを続けていくのが理想なのではないか。

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