「小さな達成感」の積み重ねが「大きな達成感」になる
普通の風邪でも、2歳以下の子は肺炎に進展することがある。経過が長くなれば保護者も心配するし、ぼくも心配になる。これはちょっと風邪の範疇を超えているなと思えば、順次検査を進める。
明らかな呼吸困難があれば入院の方向で公立病院に連絡を取るが、できれば保護者は入院させたくないと思っている。炎症反応が中程度で、X線で肺炎の影が軽度であるならば、なんとかクリニックで治したい。
ネブライザー(薬を霧状にして吸ってもらう)で気管支を拡張し、痰を吸引する。ペニシリン系抗生剤を飲んでもらい、細菌の数を減らす。連日クリニックに通ってもらい、ネブライザーと痰の吸引を繰り返すと、軽度の肺炎であればかなりの確率で治癒させることができる。
肺炎を治し切れば、達成感がある。それはもちろん、小児がんや食道閉鎖ほどの大きな達成感ではない。でも、数が圧倒的に違う。小さな達成感でも何例も数を積み上げるとそれは大きな達成感になる。
子どもには伸び代がある
うちのクリニックには発達障害の子の受診が多い。ぼくの仕事は、大枠で診断をつけて、児童発達支援事業所、つまり「療育」へ子どもをつなげることだ。そこから先のご家族との付き合い方は、それぞれ異なる。
療育につなげて、それでほぼおしまいのこともある。風邪をよくひくので、そのたびに風邪の診断・治療とともに、療育の様子を教えてもらうケースもある。また、療育に行き詰まったご家族が相談のために受診することもある。何カ月に1回、定期的に来てくださいね……みたいな形でフォローしている子はいない。でも、門戸はいつでも開いている。
子どもには伸び代がある。どんなに障害が重くても必ず伸びていく。もう8年間診ている女の子は、知的障害が比較的重い自閉スペクトラム症の子だ。最初にうちに来たときは、2歳半。ぼくはこの子を療育機関につなぎ、ご家族はお子さんが3歳のときに知的障害の療育手帳を取得した。この子はよく風邪をひく子で、ちょくちょくうちのクリニックを受診する。
大変なこともいろいろあったが、その子は少しずつ成長していった。8歳で、表情が増えて、悲しいときは、悲しい表情をするようになった。名前を呼ばれると手を挙げるようになった。10歳になってオムツが外れた。学校では離席しないで授業を受けることができている。おうむ返しが多いが、言葉は順調に増えている。

