生徒に植え付ける「強烈な被害者意識」

また教科書では、西側諸国がロシアの敵として明確に位置づけられています。

「西側諸国は、ロシアの国内情勢をなんとしても不安定化させようとしている。この目的実現のため西側は『あからさまなロシア嫌悪』を広めている」

「西側がロシアをさまざまな紛争に『引きずり込む』ようになった。西側の究極的な目的は、ロシアを破壊してロシアの天然資源を奪うことだ」

西側は一枚岩の悪意ある勢力とされ、ロシアの豊かな天然資源(石油、天然ガス、鉱物資源など)を奪おうと画策していると書かれています。

この論理でいえば、NATOの東方拡大も、ウクライナの民主化運動(オレンジ革命、マイダン革命)も、すべては西側がロシアを弱体化させるための「仕掛けられた罠」ということになります。

このような記述は、生徒たちに強烈な被害者意識を植え付けることになることは想像に難くありませんね。

「ウクライナは西側に操られている」

ウクライナについての記述はさらに過激です。

「ウクライナは国家主義の過激派が支配する侵略国家で、西側に操られており、西側はロシア打倒の道具としてウクライナを利用している」

ここでは、ウクライナは独立した主権国家ではなく、西側の「道具」「操り人形」として描かれています。つまり、ウクライナ人自身の意思は存在せず、すべては背後の西側諸国が糸を引いているという認識です。

セイマの議員団と会談をするウクライナのゼレンスキー大統領
セイマの議員団と会談をするウクライナのゼレンスキー大統領(画像=Saeima//CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

この認識は、国際法の基本原則である国家主権と民族自決権を根底から否定するものです。「国家主義の過激派が支配する」という表現は、2014年のマイダン革命以降のウクライナ政権を指しています。

マイダン革命では、親ロシア派のヤヌコーヴィチ大統領が民衆の抗議により退陣に追い込まれ、その後親欧米派のポロシェンコ政権、そして現在のゼレンスキー政権へと続きました。

これらはいずれも民主的な選挙によって選ばれた政権ですが、教科書では「過激派」と呼ばれています。

BBCも批判した「疑惑の掲載データ」

また、こんな記述もあります。

「2014年までウクライナの人口の80%が、ロシア語を母語と認識していた」

これはイギリスのBBCでも大きく批判されていた部分で、明白な虚偽であるとの見方が強いです。

キーウのシンクタンクであるラズムコフ・センターが2006年に公表した世論調査によると、ロシア語が母語だと答えたウクライナ住民は30%に過ぎず、自分の母語はウクライナ語だと答えたウクライナ住民は52%に上ったとされています。

統計データの扱いに虚偽があるならば、歴史教育の根幹自体が揺るぎかねないものになってしまいます。