「世論の推進力は、弱いかもしれない」

参院憲法審では、参院選合区解消の手立てが議論されてきた。参院には「1票の格差」是正を目的に、2016年参院選から「鳥取・島根」「徳島・高知」両選挙区で合区が導入されている。このまま都市部への人口流入が続けば、合区がさらに増える可能性も大きい。

自民党は、参院議員を3年の改選ごとに都道府県から1人以上を選出する規定を憲法47条(選挙に関する事項)に追加する案を示している。憲法43条が衆参両院議員を「全国民の代表」としているところを、参院議員を「地方代表」と位置づけるものだ。憲法14条が定めた人口を基準にした投票価値の平等とは一線を画すことにもつながる。

自民党の合区解消案には、維新だけでなく、国民民主党や参政党、保守党が同調し、立憲民主党や公明党は公職選挙法改正で対応すべきだと反論している。

自民、維新、国民民主、参政、保守の5党を合わせた参院の議席は162議席で、発議に必要な3分の2にあと4議席足りないが、首相には無所属議員らの取り込みが計算に入っているのかも知れない。

境家史郎東大教授(政治学)は、5月3日の読売新聞に「参院主導で議論ができるほぼ唯一の論点は、参院選挙区の合区解消だ。ただ、高知県、島根県など該当地域はともかく、全国レベルで有権者の関心があまり高くない。国民投票を乗り越える世論の推進力は、弱いかもしれない」と語っている。

参院選合区解消も一筋縄では行かないことを思い知らされる。

「退陣することになっても、本望かな」

首相は「憲法改正の主役は国民だ。国民投票こそ国民主権の最大の発露だ」と言う。萩生田氏は4月13日の記者会見で、国民投票への「発議のメド」が何を指すのかを問われ、「条文の整理」や「各党の合意」を挙げた。

衆参両院、各党の賛否や動きから見て、参院選合区解消は、国民投票に掛けられる可能性があるが、緊急事態条項については、参院本会議で3分の2の賛成が得られる公算は大きくない。自民党は1年後の「発議のメド」に向け、多数派工作の戦略を見いだしてもいないのではないか。

こうした疑問を、首相に近い筋は「自民党は『ビジネス保守』だ。首相も本気で憲法改正をやる気はない。日本会議などの支持者向けのポーズだ」と読み解く。

首相はこれまで憲法改正論議に限らず、野党との合意形成に汗を流したことはなく、今後もその気もないだろう。憲法改正ができないといって責任を感じることもないらしい。

安倍氏は、9条改正への思いをこう語っていた。「国民投票で負けて首相を退陣することになっても、それはそれで本望かな」

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