27年春までに「発議のメド」という首相発言を起点にすると、27年秋までに国民投票を実施し、過半数の賛成を得られれば、公職選挙法改正や周知期間を経て、28年7月の参院選から新制度を適用するというスケジュール感を示したことになる。

27年9月には自民党総裁選が予定されている。首相の再選戦略と絡んで、その前後に国民投票を設定するには、政治的にも日程的にもタイトと言える。どこまで政治カレンダーを読み込んでいるのか。「発議のメド」も立っていない現状で、そんな先のことまで考えられないというところかも知れない。

「条文案を詰める段階に入っている」

首相が9条改正よりも参院選合区解消を優先すると言いだしたのは、日本維新の会との連立合意書(25年10月)に基づいて設置された両党の憲法改正条文起草協議会などで積み上げた議論や現在の状況に、ほとんど関心を示していないことも意味する。

連立合意書には、9条改正や緊急事態条項の具体的な条文案を起草するとあるが、参院選合区解消は書かれていない。自民党の新藤義孝元総務相(憲法改正実現本部事務総長)らと維新の会の馬場伸幸前代表(憲法改正実現本部長)ら実務者による条文起草協議会は、25年11月から9条改正と緊急事態条項の2本立てで議論を積み重ねてきている。

4月9日の衆院憲法審では、新藤氏が「論点が整理されたテーマから順次、改正条文起草の検討作業に入っていくことを提案する」とし、緊急事態条項について「条文案を詰める段階に入っている」との認識を示していた。

維新からは「首相を批判する気はないが、参院選合区解消が優先されるのは受け入れられない」との声も聞こえる。

自民、維新両党の9条改正をめぐる意見の隔たりは確かに大きい。

自民党は、2018年3月の党大会で改憲4項目を採択したが、自衛隊について、9条1項(戦争放棄)、2項(武力不保持・交戦権の否認)を維持したまま「9条の2」を創設し、「首相を最高指揮官とする自衛隊を保持する」と明記する案を打ち出した。安倍氏が当時、連立政権を組んでいた公明党の太田昭宏元代表らの「加憲」という考えに配慮し、2項の維持で折り合った経緯がある。

「9条のおかげは戯れ言にすぎない」

日本維新の会は、9条改正について、2項を削除し、自衛権と「国防軍」の保持を明記すべきだという立場だ。

馬場氏は、4月9日の衆院憲法審で、9条改正について「憲法上の政府解釈で自衛隊の海外での武力行使を禁じている点も含め、解決しない重大な憲法上の瑕疵があることは明白だ」と述べ、自衛隊明記だけでは不十分だとの意向を示した。中東情勢をめぐって「一部の野党、メディアから憲法9条のおかげで自衛隊派遣を断れる旨の言説が喜々として発信されているが、戯れ言にすぎない」と切り捨ててもいる。

馬場氏は「普通の国においては軍隊の派遣は政治判断の問題だが、日本では法的根拠を巡る神学論争に明け暮れ、国の生存を図る手当ての議論が置き去りにされているのが常で、まさに本末転倒だ」との正論も展開した。

維新の案は、自民党が野党時代の2012年に作成した、2項を削除し、「国防軍」の保持を盛り込んだ憲法改正草案に近い。

首相就任前の高市氏が、25年6月の衆院憲法審査会で「12年4月の自民党憲法草案の策定に私も参加した。それがベストだと思っている」と発言したことも蒸し返されている。

憲法改正派の集会に寄せられた高市首相のビデオメッセージ=2026年5月3日午後、東京都千代田区
写真=共同通信社
憲法改正派の集会に寄せられた高市首相のビデオメッセージ=2026年5月3日午後、東京都千代田区