一日葬の導師

うららかな春の日、今日は葬儀サービス会社(※4)「みんなのお葬式(仮名)」からの紹介で一日葬の導師を務める。葬儀会場は東京都葛飾区にある家族葬専門ホールだ。

葬儀開始は午前11時だから、その1時間前の10時には到着する必要がある。準備を整えて、荒川区のアパート、いや「東法院東京教会」を自家用車で出発。葬儀会場に到着すると、案内された僧侶控え室で葬家の施主(喪主)と顔合わせとなる。

5日前に83歳で亡くなった男性の長女が今回の施主・永沢さんだ。

葬式
写真=iStock.com/kyonntra
※写真はイメージです

50歳前後の品の良い女性で、「葬儀の喪主は初めてなのでどうしていいかよくわかりませんが、よろしくお願いします」

深々と頭を下げて、あいさつをされる。

こちらも静かに合掌し一礼。

「東法院の松谷真純です。本日は心を込めてお勤めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします」

※4 葬儀サービス会社
「みんなのお葬式」社は、葬儀サービスを提供しているものの「自社で葬儀を直接施行する葬儀社」ではなく、葬儀社を紹介・仲介するサービス会社だ。実際の葬儀の施行(式場・祭壇・棺・搬送など)は、地域の提携葬儀社が担当する仕組みで、同社は葬儀社を紹介・マッチングするプラットフォームを提供している。よって、ここでは「葬儀サービス会社」と呼称する。

故人の「戒名」発表

私は事前に用意した戒名授与証(※5)を永沢さんに見せた。

事前に電話で、故人の生前の様子、職業などを聞き、現役時代は建築現場の仕事をされていたのを考慮して、戒名にも“建”の一字を入れている。

「戒名には、建築の現場のお仕事にご尽力されてこられた、その意味を込めました」

戒名の説明をするが、緊張気味に顔を伏せる永沢さんの表情は読み取れない。喜んでくれたのかどうかうかがいしれないが、まあよしとする。

戒名の説明が終わったところで布施袋を受け取る。

永沢さんが退出したあと、袋を開封して中身をあらためる。「みんなのお葬式」から聞いていたとおり、12万円が入っていることを確認。

しばらくすると斎場のスタッフが入室し、当日の打ち合わせに移る。司会の担当者はどうやら派遣会社から来ているらしい。最近では葬儀スタッフの多くが派遣会社からやってきている。

※5 戒名授与証
故人の戒名を授与することを証した書類。故人の法名(戒名)、俗名を自筆墨書で記し、日時、寺院名、住職(僧侶)名、押印が基本。戒名の由来(たとえば故人の職業・趣味など)を付記する僧侶も多いが、私はほとんどの場合、口頭で説明する。施主の顔色を見て、説明内容を適宜変更する必要があるからだ。仮に施主が不満げな表情をしていれば、いかに今回つけた戒名が伝統に従う正しいものであるかを力説するようにしている。トラブル回避の策でもある。