「納棺師だけでなく、残された人も一緒に“おくりびと”になれる工夫を大事にしています。100点満点の式ができたと思ったことはありませんが、自分なりに『よりよいお別れ』を模索し続けることで、残された人がよりよい人生を歩むお手伝いができればいいなと。お母様を亡くされたお子さんから、『父の納棺を担当してくれた木村さんにまたお願いしたい』と指名をいただいたときは、自分のやり方は間違っていなかったんだと本当にうれしかったですね」

相当な覚悟で集まった納棺師の“卵”たち

かつて、死に携わる納棺師への世間のタブー視は根強かったが、父が監修した映画「おくりびと」や、高齢化による多死社会の影響で、理解や共感は少しずつ広がってきた。一方、核家族化や宗教観の変化を受け、葬儀の簡略化が進み、直葬も増えている。そんな今、心をこめて故人をおくる仕事に改めてスポットライトが当たった。映画を機に納棺師を志す人が増えたことを、木村さんは前向きに捉えているという。

「目指すきっかけは何でもいいと思うんです。大切なのは、現実を知った上でどうするのか。私との面接を経て、今期『おくりびとアカデミー』への入学を決めたのは、結果的には例年通りの人数になりました。そのうちの一人、奄美大島で葬儀の仕事に20年間携わってきた60歳の女性は、映画を見て『納棺について一から学び直したい』と思ったそうです。相当な覚悟で集まってくれたみなさんが、立派な納棺師に育っていくのが楽しみです」

木村さんが監修した「ほどなく、お別れです」の試写会に来てくれた父に感想を聞くと、「まあまあだったな」と返ってきた。だが隣の席にいた妻はあとでこう教えてくれた。

「お父さん上映中ずっと泣きっぱなしだったよ」

(AERA編集部・大谷百合絵)

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