ホームレス、移民、難民の溜まり場に
ビルの周りは足場が残されたままで穴だらけの廃墟同然になっており、その地下は路上生活者が排泄する場所であり、麻薬取引も行われる無法地帯として有名になってしまっているのです。昼間に訪問してみましたが、ビルは落書きだらけで、放置された建築現場にはゴミが山積み、不法侵入したホームレスの住居となって排泄物の臭いが蔓延していました。
しかし、驚くべきことに、この物件の所有権は中国の会社にあるので、地元の自治体も中央政府も手出しができないというのです。ロンドンではオフィス物件も住宅も不足しているというのに、このように中国系資本が不動産を買い漁って放置してしまうのです。
ネスレビルのように、荒れた地域には貧しい移民や難民、犯罪者が集まり、街の景観は破壊され、豊かな人々は引っ越していきます。自治体が都市計画を頑張っても、こうした荒れたビルがあると、いくら対症療法をしても効果がありません。
「ディストピア」としては完璧な場所
ネスレビルの前には、フェアフィールドホールズという公民館があり、かつてはデヴィッド・ボウイやレッド・ツェッペリンが演奏していた有名な場所です。治安が良ければ観光向け音楽フェスや様々なイベントが可能なはずです。ロンドンから列車で15分ほどと日本で言えば中野や船橋のような場所なのに、実にもったいない話です。
今や1960年代の華やかな名残はなく、地元の人たちはなるべく避ける地域になっています。そのあまりに酷い荒れ方に、ハリウッドが「犯罪現場」や「SFに登場するディストピア」の映画撮影に使う有り様です。セットを組む必要がないからです。
多様性と近代化、ポストモダン、ユートピア思想により豊かになろうとした結果、その予想がすべて逆になってしまった今のイギリスを象徴しているようです。
このように荒れ果てているクロイドンでは、難民と当局、逆に難民に反対する地元民と当局、もしくは外国人同士の衝突が頻繁に起きており、今のイギリスの空気を代表するような地域になっています。

