シミュレーション②マンション購入しない編

では、ワンルームマンションを購入せず、このまま親との同居を続けた場合はどうでしょうか。同居を続けた場合は、親亡き後は隼人さん一人でその自宅に住み続けることになります。

<設定条件>
・ 子どものために新規にマンション購入はしない。現在の同居を続ける。
・ 両親の他界後も自宅は売却せずに、そのまま住み続ける。
・ その他の条件は、前のシミュレーションと同じ。
【図表2】同居を続けた場合の、将来の家計の状況
筆者作成

親亡き後には、親が遺した庭付き一戸建ての自宅に、一人で住み続けることになります。資産の活用という面では、あまり有効的な利用とは言えません。それでもワンルームマンションを購入した場合に比べて状況は改善します。

けっして経済的に余裕がある状況ではありませんが、隼人さんが80代になっても貯蓄が1000万円近く残り、生活破綻の心配をする必要はなさそうです。

ただ、親のお金と自由は奪われます。「ひきこもり」の隼人さんのための食事代の工面のみならず、生活上の世話などを生涯引き受ける可能性が高まります。老後に夫婦で旅行などを楽しむといった自由な行動ができなくなるかもしれません。

それでも、ワンルームマンションを購入したケース同様に、隼人さんが働き始めたら、事態は劇的に好転します。収入増により家計が安定化することで、両親は旅行や買い物など自分たちのために自由に使える可能性が出てきます。

不動産高騰で「現状」脱出しづらく

昨今、不動産の状況は以前と大きく変わっています。都心に近いエリアでは、ワンルームマンションであったとしても、かなりの金額が必要になります。

さらに最初のシミュレーションでわかった通り、子が別居をした場合には、親と子の“二重生活”によって、生活費が上がります。それが長く続くと、貯蓄がどんどん減るのは必至です。

「今はマンションの価格が上がり過ぎていますので、お子様のために購入するのは得策ではありません」

私は、自分が紹介したプランがうまくいかず、観念して言いました。

「そうですか。当面は同居を続けながら、様子を見ていくしかありませんね」

父親も現状維持しかないことにちょっぴり残念そうです。

「いずれはご自宅の有効活用についても考えなければなりませんが、それはまだ先のことです。あわてる必要はありません。また状況も変わってくるかもしれません」
「マンション価格の上昇もさることながら、息子の状況が変わってくれればよいのですが……」

働けないお子さんのためにワンルームマンション購入によって自立・独立の機運を高めるという方法は悪くはありません。ひきこもりがちな「現状」を打破する可能性もあります。

ただ、必ず成功するとはいえませんし、新築・中古の不動産相場の高騰は、そうした戦略を無効化してしまうという意味で罪な存在だと言えるでしょう。

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