男子高野球部一のイケメンとの出会い
映画と並んでなぜか、野球が大好きな少女だった。女子高からの帰り道、近くの男子高の野球部の練習をよく見に行き、野球部一のイケメンとお付き合いをすることに。それがのちの夫、昭夫さんだ。
“アッキン”、“照ボウ”と呼び合う仲になった。女子学生が練習を見に来てくれるなんて、男子高校生にとってこんな“僥倖”はない。
「私が球場に入ると、みんなが『アーアッ』て大きな声を出して張り切るもんだから、先生が毎日、練習に来てくれって言うの。行けばベンチに座らされて、マネージャーみたいなことしよったのよ」
まさに、野球部のマドンナ。何も臆せず、好奇心のまま行動する、天真爛漫な少女が目に浮かぶ。花のように、明るく笑って。
高校3年になって男女共学となり、昭夫さんと同じ高校で学んだ。卒業後は、一緒に横浜の大学へ行こうと約束した。
その年、父である弁助さんが今の場所で映画館を始めた。子どもたちにいい映画を見せたいという思いがあり、映画館の名前は小学生に募集し、4年生女子の希望で「青い鳥」になった。初上映は、ディズニーのアニメ「白雪姫」。招待された小学生にとって、どれほど感激だったことだろう。
「平屋の映画館で、欧州映画を上映してました。そしたら映画部の高校生から、『洋画をようするから、ブルーバードにしたら』って。それで、『ブルーバード』に変えたんです」
映画館の“テケツ”の引力に導かれ
自分の家が、映画館になったのだ。照さんにとっての放課後は、夜までどっぷりと映画漬け。切符売り場(通称テケツ)に入って、切符を切る役もたまらなく楽しかった。
「大学の願書まで出したのに、行くのをやめたの。『横浜は一人で行って。私は別府に残るから』って。“テケツ”に座るのが、楽しくてしょうがないの。面白くなってきてね」
なんと、天然な気風の良さ。大学とテケツを秤にかけて、何の迷いもなくテケツを選ぶ。その判断に世間の価値観とか、外側の物差しは何一つ入ってこない。軸は、自分がわくわくするものに向かうだけ。好奇心の赴くまま、お茶目に笑う18歳がそこにいた。
ここから、4年間の遠距離恋愛が始まった。お互いを結びつけるのは、手紙だけ。出せば、3日後に返事が届く。そのくり返し。
「相手は貧乏学生だから、切手を必ず手紙に入れるの。その切手を貼った手紙が来て、その行ったり来たり。彼は横浜で就職するつもりで、私を呼ぼうと思ってたんだけど、映画館が面白かったし、私は長女だからね。それで、彼が別府に帰ってきた。『ニュートンの引力を感じる』とか、言ってたけど。別府に戻ってくるのを待って、すぐに結婚した」
昭夫さんは映画館の仕事に就き、照さんは24歳で長女、29歳で次女・実紀さんを出産した。実紀さん(66歳)は今、母の片腕のマネージャーとして映画館の仕事を担っている。

