人の上に立つ人物の特徴は何か。歴史家・作家の加来耕三さんは「『平家にあらずんば人にあらず』という言葉を残した平清盛は傲慢な人物だと思われがちだが、部下はもちろん、敵対する相手にまで優しさをみせた結果、天下を取った」という――。
※本稿は、加来耕三『歴史の一流は「師匠」から何を学んだのか』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
部下を気遣う繊細さを持ち続けた理想的人物
こんな師匠や上司になら、ぜひ学びたかったと思える例として、意外に思われるかもしれませんが、古の平清盛を紹介します。
清盛は部下を叱る際、決して人前では叱りませんでした。部下に恥をかかせないように、とこっそりと誰もいない場所に呼んで、言い聞かせていたのです。
「平家にあらずんば人にあらず」という言葉から、清盛を傲慢な人物だと思い込んでいる人は少なくありません。
しかし彼の実像は独裁者や暴君ではなく、人の話をよく聞く、そして誰にでも気くばりができる理想的な人物でした。だからこそ、平家は天下が取れたともいえます。
清盛が他人に気くばりができた背景には、若い頃に自身が辛酸を嘗めた(苦しくつらい経験をした)ことが大きく影響していました。
当時の公家にとって、新興の武士は犬や馬と同等の存在でしかなく、清盛自身も陰湿ないじめに涙をこらえる日々を送っていたのです。
いじめられた経験を持つ人間は、それがどれほど人としてやってはならないことか、身に染みて理解しています。そのため清盛は、太政(だいじょう、とも)大臣に出世してからも、部下を気遣う繊細さを持ちつづけることができたのでした。

