このビル崩壊と中国企業の関係を、欧米メディアや海外華僑メディアは繰り返し報じてきた。香港の独立系メディアInitiumの報道によると、施工に当たっていたのはタイ大手デベロッパーITDであり、中国中鉄第十工程局が51%の支配権を握る合弁体制となっていた。同局は2024年、構造の上棟を祝うプレスリリースを出していたが、事故が起きるとひっそりとウェブサイトから削除している。
ニューヨーク・タイムズは、バンコクの建設現場労働者らの証言を伝えている。それによると、中国鉄道第十工程局が下請けへの支払いを絞った結果、劣悪な建材が使われ、柱は異常に細くなったという。汚職監視団体の調査では、崩落現場から回収された歪んだ鉄筋が、中国人投資家所有のタイ工場で製造された規格外品と判明した。当局は事故後まもなく、この工場を閉鎖した。
責任を押しつけ合う中国とタイ
鉄道事故後、中国・タイは互いに責任を押しつけ合う構図にもつれ込んだ。
鉄道事故について、中国外務省の毛寧報道官は哀悼の意を表明しつつも、「事故が発生した区間はタイ企業が建設を担当している」と暗に責任を否定したと、ロサンゼルス・タイムズは伝えている。だが、ビル崩壊事故にITDと中国企業が関与しており、そのITDが鉄道事故も請け負っていた事実は消えない。「中国が関わるプロジェクトは危ない」。そんな認識がタイ世論に広がりつつある。
一方の中国SNSでは、「タイが中国に責任を押し付けようとしている」との反発が広がった。チャイナ・グローバルサウス・プロジェクトによれば、過去の類似事故を省みる声はほぼなく、WeChatではクレーンが東欧製であったとする風説や、ITDの架空の事故歴など、虚偽情報も拡散された。
もっとも、一様に中国の責任と論じることは早計で、タイの安全管理体制にも根深い問題がある。国際労働機関(ILO)の2020年統計によると、タイは職業上の死亡事故で世界13位、労働者10万人あたり5.3人が死亡している。ニューヨーク・タイムズは、アメリカの運輸安全委員会のような独立した中央調査機関は存在しないと指摘。さらには、検査官に賄賂を渡し、安全義務への違反を見逃してもらう慣行も根づいているという。
インドネシアが証明した「もう一つの失敗」
中国の一帯一路鉄道外交は、タイ以外の国でも行き詰まっている。タイとは対照的に中国の資金を受け入れたインドネシアでも、破綻への道を歩みつつある。
東南アジア初の高速鉄道として2023年10月に開業したジャカルタ―バンドン高速鉄道「Whoosh(ウーシュ)」。総工費73億ドル(約1兆1581億円)の同路線は、最高時速350キロで両都市間の移動時間を3時間から約40分に短縮した。

