遅々として進まないタイ延伸
習近平政権は、タイ高速鉄道構想を汎アジア鉄道網の要衝と位置づけている。
バンコクからラオス国境のノンカイまで高速鉄道を延ばし、中国・ラオス鉄道につなげる。完成すれば中国雲南省の省都・昆明からバンコクまで一本の鉄路で結ばれ、中国全土の高速鉄道網に直結する。
全長609キロ、総工費は4340億バーツ(約2兆1433億円)に上る。第1フェーズのバンコク・ナコーンラーチャシーマー間は2027年の開通を目指しており、全線開通は2030年の予定だ。
フィナンシャル・タイムズはこの路線を、中国と人口6億人超の東南アジア市場を結ぶ貿易の大動脈と見る。路線はバンコクを越えてなお伸び、タイ東部ラヨーン県の港湾・石油化学コンビナートまで続く。
ところが、現地英字紙バンコク・ポストによると、バンコクからタイ東北部の主要都市ナコーンラーチャシーマーへ向かう約251kmの第1期路線は、昨年11月時点でわずか50%しか完成していない。2017年の着工から8年を経て、ようやく折り返し地点にたどり着いたところだ。
タイでは通用しなかった「ラオスモデル」
タイの高速鉄道計画は2010年に正式に提案されて以来、遅延を重ねてきた。ラオスでは5年で完成にこぎ着けた高速鉄道が、なぜタイで難航しているのか。決定的な違いが、資金の調達モデルだ。
バンコク・ポストは、実は隣国でもあるラオスこそが反面教師になったと指摘する。ビエンチャン―ボーテン間の高速鉄道建設費の7割を中国が負担しただけでなく、ラオス政府の負担分も大半が中国系銀行からの借入だった。
中国の資金提供を受ければ、運営権や関連する利害にも踏み込まれかねない。タイの計画でも実際、サウスチャイナ・モーニングポストが伝えるように、当初中国は鉄道駅周辺の土地管理権を要求した。これに対しタイ国内では、もはや主権の侵害であるとの声が上がった。
こうした背景により、2016年、プラユット・チャンオチャ首相(当時)政権は建設費をタイ側で自己負担すると決定。2017年に中国国有企業と結んだ合意に基づき、中国は詳細設計と技術顧問派遣のみを担当する立場に限定された。ラオスで奏功した「カネを出してクチも出す」モデルだが、タイで通用することはなかった。
遅れに中国は手を出せない
もともとタイの高速鉄道計画は約20年前に議論が始まり、2014年に中国・タイ協力プロジェクトとして正式化された経緯がある。2017年12月、バンコク―ナコーンラーチャシーマー区間で着工。だが、そこからが長かった。


