「息をしているだけ」でポイントが錬成される
そもそも彼らは、ポイントカードを5枚持ち歩くことはしない。代わりに、1枚のプレミアムカードに全決済を集中させ、あとは「仕組み」に任せる。
どういうことか。
特筆すべきは、巨額な固定費のカード決済化だ。
例えば、富裕層が多く住む六本木ヒルズレジデンスのサービスアパートメントは、高額な賃料をクレジットカードで払うことができる。
仮に月に100万円の家賃をカードで払えば、それだけで年間数十万ポイントが自動的に貯まる。さらにヒルズアプリを通じて居住登録をすれば、商業施設内の飲食店舗で優待が受けられ、スーパーやスパの利用でもポイント付与が加速する。生活そのものがポイントを生み出す装置になるのだ。
経営者であれば、アメリカン・エキスプレスのビジネスカードを活用する裏ワザもある。
代表者が基本カードを申し込み、役員や従業員に「追加カード」を発行すると、追加カードの利用分ポイントはすべて代表者の基本カードに集約される仕組みだ。さらに代表者が個人カードも保有していれば、同一名義であることを条件に、ビジネスカードのポイントと個人カードのポイントを合算して一元管理することも可能だ。
仮に役員5人で1名あたり月50万円の経費をカード決済すれば月250万円の経費となり、12カ月で3000万円分の決済となる。アメックスの標準還元率(100円=1ポイント)で計算すると年間約30万ポイントが積み上がり、このポイントを代表者個人のANAマイルなどに移行してビジネスクラスの特典航空券に充てることができる。
近年では賃貸物件やシェアオフィスでもビジネスカード決済可能なケースが増えている。
息をしているだけでポイントが錬成されるシステムを、彼らは構築しているのである。
ゼロコストで金融資産を増やす
さらに、2026年現在のポイント経済圏は、かつてとは地殻変動的に異なるステージに突入している。
新NISAの定着に伴い、主要各社が「ポイント投資」を標準機能として実装した。
楽天ポイントを楽天証券でインデックスファンドの積立に充てる。
dポイントをマネックス証券経由で投資信託に回す。
ポイントはもはや日用品の足しにする消費材ではなく、金融資産の入口に変わったのだ。
人材紹介会社コトラのエグゼクティブコンサルタントによる分析記事によれば、現在のトレンドは「貯める」から「増やす・回す」への移行が進んでいる。ポイントを消費せず、証券口座へ自動で積み立てるユーザーがマジョリティとなり、ポイントの増減が個人の純資産に直結する「資産としてのポイント」という概念が定着しつつある。
富裕層は、ポイント投資を「ゼロコストの種銭」として活用する。
年間30万ポイントをインデックスファンドに自動積立し、年利5%で複利運用すれば、10年後には約49万円相当に膨らむ。
彼らにとって、その金額自体は誤差のようなものかもしれない。しかし、「自分の財布から1円も出さずに、金融資産が自動で増える仕組み」を持つことに知的快楽を感じている。それは単なる節約ではなく、システムの美学なのだ。
一方、庶民のポイント投資は、しばしば「貯まったポイントで何か買おうかな」の延長線上にある。
投資に回すほどポイントが貯まらない、貯まったらつい日用品に使ってしまう、という循環から抜け出せない。ポイントが「資産の入口」になるか「消費の出口」で終わるかは、その人の思想によって決定づけられる。


