インテルの文化人類学者たちの「発見」
① インテルの事例
半導体大手のインテルでは、文化人類学者のジュネヴィーブ・ベルが率いるチームが中国市場で興味深い発見をしました。
当時、中国ではあまり子どもにパソコンを使わせない傾向がありました。「なぜ中国の子どもはパソコンを使わないのだろう?」。インテルの文化人類学者たちは、中国の家庭に入り込んで観察を始めました。
すると、中国の親たちは「パソコンが子どもの宿題の邪魔になる」という考えを持っていることがわかりました。日本でも同じような考えの親御さんが多いことを考えれば、2005年頃のインテルの社員にとってそれが意外な事実だったということ自体もカルチャーの違いが感じられて興味深いですね。ゲームや動画にハマってしまうのではないか。そうした懸念から、パソコンを子どもに与えることに躊躇していたのです。
この発見から、インテルの文化人類学チームは逆転の発想を提案しました。
「子どもがコンピュータゲームで遊べないようにするロック機能」など制限機能を充実させることで、親が安心して子どもにパソコンを与えられるようになるのではないかと考えました。
エンジニアたちはロック機能に反対
最初、エンジニアたちは「ロック機能をつけるなんて、パソコンの価値を下げることではないか」と反対しました。パソコンの機能を増やすことには熱心でも、わざわざ機能を制限することには抵抗があったのです。
ところが、実際にロック機能を導入したパソコンを発売してみると、中国の親たちは大喜びで購入し、子どもたちのパソコン利用率は大きく向上しました。機能を増やすのではなく制限することが、結果として市場拡大につながったのです。
この事例こそ、アンケートで「パソコンにどんな機能が欲しいですか?」と聞いても出てこないことを物語っています。「ロック機能が欲しい」と答える消費者はほとんどいないはずです。家庭の中に入り込み、親子関係や教育観を含めた文化的文脈を理解することで、この重要なインサイトが得られたのです。

