スムーズな寝返りができるか

さて、どのように「枕の高さを合わせるのか」だが、キーワードは寝返りだ。体格で枕の高さに目処をつけ、最終的には寝返りのスムーズさで決める。

「寝返りをしないと体に痛みが出やすくなる」と山田医師。

「寝返りというのは血液やリンパ液などの体液を動かしてくれ、それによって疲労していた体の組織の循環が良くなるのです。例えば動かなかった関節が、寝返りによって循環することでリカバリーして、翌朝また“使える体”に戻っていきます」

だから低反発ウレタンフォームや羽毛などの軟らかくフワフワした枕は、寝返りが打ちにくいためNGという。

同院の枕診断士・松本和也氏が「軟らかい枕は体を動かすときに力が入り、寝返りをするたびに覚醒してしまう」と補足する。スムーズな寝返りができるという観点から「平面で硬い枕が良い」となる。

ぜひ玄関マットとタオルケットで自作する枕、名付けて「玄関マット枕」でスムーズな寝返りを体感してほしい。

用意するものは、毛足が短く裏地がしっかりして硬い玄関マットとタオルケット(あるいは大判のバスタオル)の2つのみ。それぞれ三つ折りにし、玄関マットの上にタオルケットを置く。首に当たる部分をタオルがめくれる側にしよう。

最初に横向きの体勢になり、額から鼻、あご、胸を通る線がまっすぐになるのが適切な状態(写真1)。

【写真1】正しい姿勢がつくれていれば、その線が床面と平行になっている
筆者撮影
【写真1】正しい姿勢がつくれていれば、その線が床面と平行になっている。タオルケットをめくったり戻したりして高さを合わせよう

次に、あおむけになり、のどや首筋に圧迫感がないかの確認を(写真2)。

【写真2】呼吸が楽であることが重要
筆者撮影
【写真2】呼吸が楽であることが重要。すーっと息が吸えて、フーッと吐くときにどこも詰まった感じがしない高さを探そう

この2つを満たせば自然な寝返りが打てるようになるという。写真1のように両腕を胸の前でクロスして、左右の鎖骨の上に両手を置き、そのまま右に左にゴロンゴロンと寝返りを。力を入れなくてもラクに転がることができれば、それがあなたにとってベストな枕の高さだ。

「健康な成人の場合、一晩に20~30回の寝返りをするといわれます」と、山田医師。

「とはいえ実際に一晩で何回の寝返りをするのが最良か、また寝返りがどのように心身に作用して睡眠の質や痛みを改善しているのかはいまだ完全には解明していません。けれども寝返りを重視し、寝返りができるかを基準に枕の高さを決めてきたら、統計的に優位な差が表れるほど多くの患者さんの不調が改善されたのです」

本来“眠り”というのはリカバリーの時間だと、山田医師は訴える。

「昼間にダメージを受けた体を休ませ、細胞の再生やメンテナンスを促す作用を持ちます。若い人ならクタクタに疲れれば、玄関のドアを開け、そのまま倒れ込むように床に寝ることも可能かもしれませんが、それではリカバリーになりません。眠りは捨てる時間でもオフタイムでもなく、積極的に努力して良くするべき時間だと思うんです」

取材をして理論的に納得した私は、もう一度「枕の高さ調節」をしっかり行ってから、引き続き「整形外科枕」を使用した。そして1週間後、試しに手元にあるなかで一番マシと考えていた枕に変えてみると、呼吸がしにくいと感じた。なかなか寝付けなくなり、整形外科枕に戻すとスッと眠りにつけたのである。

日頃から「よく眠る」ためには、日中に「よく動く」ことが大切だと考えている。同時にリカバリーできる睡眠環境、すなわち寝返りが打てるかどうかにも気を配りたいと思うのだった。

【関連記事】
血液をサラサラにし、骨のヨボヨボ化を防ぐ…大さじ1杯入れるだけで「納豆の真の力」が引き出せる液体の名前
「牛乳だけ」よりずっと効果的…医師「必ず一緒に摂って」と断言、骨を強くする"スーパーで買える食材"
世界の研究でわかった「中高年のマスターベーション」の重要性…医師が勧める「1週間あたりの射精の回数」【2025年6月BEST】
台所を見れば認知症の予兆がわかる…介護のプロが断言「物忘れ」よりも早く気づける"食卓の異変"
食前に「たった一杯」飲むだけで肝臓の脂肪を落とせる…専門医の中では常識「食物繊維、発酵食品」あと一つは?