「利益追求」だけが目的ではない
神宮外苑に関する報道では、再開発が「事業者の利益追求」を主目的としているかのように語られることもあるが、実際はそれだけではない。都市再開発法の第一条(目的)には、次のように記されている。
「この法律は、市街地の計画的な再開発に関し必要な事項を定めることにより、都市における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図り、もつて公共の福祉に寄与することを目的とする。」
もちろん、地権者や事業者に利益がなければ事業は成立しない。しかし法定再開発は、公的な手続きが必要である以上、「土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新」を図り、結果として「公共の福祉に寄与する」ことが大前提となる。法律に基づく手続きが適正に行われていれば、基本的には大きな瑕疵や社会的な不利益があるとは考えにくい。
そもそも土地は私有物とはいえ、有限な資源であり公共性が極めて高い。都市中心部において、限られた公共財である土地を有効活用することは社会的な要請だ。駅前の古い街並みや工場跡地などを再開発することは、土地の有効利用という観点では理にかなっている。だからこそ、法律に「高度利用」という言葉が盛り込まれているのだ。
日本の街並みと欧米の街並みの違い
もとより法律は万能ではない。そのため神宮外苑の樹木伐採に対する懸念や、景観を破壊するという指摘、葛飾区の京成立石駅の再開発に対する、昭和レトロな街並みが消えることへの抵抗感、街の個性が失われるというような指摘にも一理あるとは言える。
一方で、日本の街並みは欧米とはその成り立ちが大きくことなることにも留意が必要だ。
世界遺産を見れば、その違いがよく分かる。世界遺産には「旧市街」という古い街並みが含まれるものがあり、その件数を見ると、ヨーロッパが圧倒的に多い。
意外に思うかもしれないが、日本の世界遺産には「旧市街」という名称が含まれるものはない。もちろん、京都、奈良などの神社仏閣といった建造物や文化財も世界遺産となっているが、街並みそれ自体が認定されているわけではない。近いものとしては、白川郷・五箇山の合掌作り集落があるだけだ。
これは日本が古代から新しい文化を受け入れ、生活様式や建築様式を大きく変化させてきたという文化のあり方が大きく影響している。

