体のどこへでも入り込んで悪さをする黒幕
極端な話をすると、糖や脂を過剰摂取してAGEsが血液中でつくられたとしても、AGEsは終末糖化産物なので、それ以上反応を起こすことはなく、そのまま排泄されたり、免疫細胞に貪食されたりして終わりです。
しかし、現実にはAGEsは、体の至るところで生成され、遺伝子まで変性させてしまう傍若無人な悪さを発揮しています。
体内で生成されるAGEsは問題の原因になりますが、実はAGEs単体ではそれほどの凄まじい悪の能力を持つことはできないのです。
では、なにがAGEsを強大な悪にたらしめるのでしょうか?
それが、物質「アルデヒド」です。
アルデヒドとは、炭素原子(C)と水素原子(H)、酸素原子(O)の組み合わせであるアルデヒド基(CHO)を持つ物質のこと。アルデヒドはさまざまな物質と化学変化を起こしやすく、多くの種類が存在します。
たとえば、飲酒した場合に、アルコールは肝臓で代謝されますが、その過程で生成されるのが有害なアセトアルデヒドです。アセトアルデヒドは、その後アルデヒド脱水素酵素(ALDH)によって無害化されます。
また、新築の家などで起こるアレルギー反応「シックハウス症候群」の原因となるのは、人体にとって有毒な化学物質であるホルムアルデヒドです。このほかにも脂肪酸由来のメチルグリオキサールなど、さまざまなアルデヒドが存在します。
アルデヒドは、体内のさまざまな物質と反応しやすい性質を持ち、しかも血管から細胞膜、核の内部までどこまでも入り込んでいく能力を持ちます。そのため、体のあらゆる場所に侵入し、攻撃を仕掛け、ダメージを与えることができるのです。
アルデヒドの攻撃で糖化がうながされる
有害なアルデヒドが、ところかまわず攻撃を仕掛けることで、細胞がダメージを受けますが、糖化もアルデヒドの攻撃をきっかけに起こる現象といえます。
代表的な糖の一種であるグルコース(ブドウ糖)の分子は、リングのような環状の立体的な構造をしています。このうち0.002%はリングが壊れた開環型のグルコースのエラーが生じますが、環状構造が壊れると、内部のアルデヒド基が露出してしまいます。これが、周囲を攻撃し、糖化のリスクを高めます。
糖の過剰摂取により、高血糖状態になると、開環型のグルコースの量も相対的に増えるので、アルデヒドの量も増えます。これにより、アルデヒドはさらにグルコースと結びついたり、アルブミンなどの血液中のタンパク質(血清タンパク質)を攻撃したり、細胞表面にある「糖鎖」という、糖とタンパク質や脂肪をつなぐ鎖と反応したりし、さまざまなアルデヒドを連鎖反応的に増やしていきます。
このような一連の反応によってアルデヒドが過剰になると、アルデヒドがアミノ酸(タンパク質を構成する最小単位の有機化合物)の間に入り込むようになります。
それらが通常のタンパク質とは異なる変性タンパク質になるのですが、それこそがAGEsの正体。糖とタンパク質が結びつくことで起こる糖化ですが、実はアルデヒドによって誘発される反応だったのです。
しかも、アルデヒドは、前述したように毛細血管から細胞膜の内側まで侵入することができ、細胞内の核の内部にまで入り込みます。侵入した先で次々に反応を起こしながら、糖や糖鎖と結びついて糖化を誘発するのです。
DNAまで糖化させ、AGEsを生成し、病的なエピゲノム変化を起こさせるのは、このとんでもない黒幕であるアルデヒドの仕業といえます。
これまで、体内で糖化が起こり、AGEsが生成されることの問題点を指摘してきましたが、実は体内の糖化反応の背景には、アルデヒドの増加が影響しており、糖と脂の過剰摂取による病的な老化を引き起こす主犯こそ、アルデヒドだったのです。

