前最高指導者は世襲に反対していた
ハーメネイ師は生前、自身の息子が最高指導者を継承することに対し、公には否定的な立場を取っていた。シーア派の教義上、世襲自体に問題はない。しかし、王制を打倒して建国した現在のイランにとって、権力の世襲は体制の正統性を揺るがす行為と見なされてきた。
だが、イスラエルとアメリカの急襲によってイランにもたらされた緊迫した情勢は、現体制の安定を最優先する方向へと舵を切らせた。結果として、裏方として実務を担ってきたモジタバ師の存在が不可欠となり、戦争が皮肉にも世襲を正当化する強力な後押しとなった。
モジタバ師は最高指導者就任後、未だ表舞台には出ていない。3月11日、ニューヨークタイムズ紙はイランやイスラエルの政府筋の情報として、2月28日のアメリカとイスラエルの攻撃によって足などを負傷していると伝えた。また、ヘグセス米国防長官はモジタバ師について「負傷し、容姿も損なわれているようだ」と語っており、情報が錯綜している。ただ唯一共通する点は、まだ息があるということだ。
3月12日、モジタバ師は最高指導者就任後、初の声明を発表した。だが、その第一声は注目を集めるにもかかわらず、ビデオ動画でもなく、音声メッセージでもなく、文章の代読という異例の発表だった。
声明では父親の死を悼み、国民に結束を呼びかけ、アメリカとイスラエルへの徹底抗戦を誓った。しかし、その内容に目新しさはなく、父親の代から使い古された表現が目立った。革命防衛隊の傀儡と化していることも否定できない。
ただ、モジタバ師は声明でホルムズ海峡封鎖について「必ず行使されなければならない」と具体的に言及している。
イランの“とっておきの切り札”
3月10日、CNNはイランがホルムズ海峡に機雷を敷設し始めたと報じたが、イラン政府もアメリカ政府も機雷の敷設については否定している。3月14日には、イランがインドにホルムズ海峡の通過を許可したと発表した。現時点で、機雷を敷設したかどうかは疑問を拭えない。むしろ、ホルムズ海峡付近で、無人機・無人小型艇で船舶を威嚇し、実質的に封鎖状態にしていると考えられる。
もしホルムズ海峡に機雷が敷設されて船舶が損傷することになれば、さらなる石油価格の高騰は避けられない。アメリカとイランの交戦が続けば、機雷の除去はさらに時間がかかるだろう。仮に機雷の除去が完了しても、心理的影響からすぐに航行が再開される保証もない。
機雷の敷設は、中間選挙を控え、マーケットの動向を最大の弱点とするトランプ大統領の戦意をくじくイランの切り札だ。
アメリカが攻撃を続ける限り、モジタバ師は徹底抗戦の構えを崩さない。
ホルムズ海峡の封鎖で原油価格は1バレル100ドルを超え、トランプ大統領は関係国へホルムズ海峡への護衛艦派遣と機雷の除去を求めている。

