都会人が憧れる「田舎暮らし」の幻想

東京での暮らしに疲れて、「田舎暮らし」を夢見る人は少なくない。効率やスピードを優先し、いつもせわしなく時間が過ぎていく都会の喧騒から逃れ、大自然に癒されながら自分のペースで豊かな人生を送りたい――。そんなスローライフに憧れて東京から移住する人は、昔から一定程度存在する。

ただ、そういったイメージ先行型の人が憧れを抱く田舎暮らしは、現実とかけ離れた妄想にすぎない。

「田舎の人は心が温かい」
「空気はきれいだし庭先で森林浴ができる」
「自分で耕した畑で毎朝採れたての野菜を食べられる」
「釣ったばかりの新鮮な魚は美味しい」

少なくともこういったイメージに引っ張られて移住を決めてしまうと、すぐさま足元をすくわれるのは目に見えている。

宮崎県高千穂市
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「東京暮らしに疲れて田舎へ移住」が失敗するワケ

「田舎の人は心が温かい」は本当か?

 田舎の人も、東京の人も、心が温かいかどうかは人それぞれだ。むしろ、田舎の人間関係はそれなりに注意が必要で、都市部とは違って人との距離が近くなる。しかも、ムラ社会的なコミュニティでは匿名性が守られにくく、人間関係が固定化されやすい。プライバシーを大切にしたい人、人との摩擦を極力避けたい人には、田舎の濃密な人間関係は逆にストレスが増大するのではないか。

「空気はきれいだし庭先で森林浴ができる」はどうか?

田舎の空気がきれいなのは間違いない。家の構造によっては庭先で森林浴もできるだろう。ただ、広い敷地では、剪定や草刈りをおろそかにすると伸び放題の草木は、日常生活もままならなくなるほどの脅威になる。ヤブ蚊やハチ、ムカデなどの害虫が大量発生し、ヘビ、ネズミ、イノシシといった害獣がすぐに住み着くからだ。

「自分で耕した畑で毎朝採れたての野菜を食べられる」「釣ったばかりの新鮮な魚は美味しい」は?

それはまさに田舎暮らしの醍醐味なのだろう。ただ、採れたての野菜は東京でも家庭菜園で十分味わえる。庭がなかったら安い市民農園を借りればいい。肉や魚も産地直送が売りのスーパーに行けば入手可能だ。

そもそも東京から地方へ移り住んだところで、本人が変わらなければ何も変わらない。仕事に忙殺されるストレス、わずらわしい人間関係、人生の漠然とした閉塞感――。それらは住む場所を変えたところで、そのままついてくるだけだ。

「東京が嫌だから田舎へ」という逃避型の移住が、しばしばうまくいかないのはそのせいだろう。