たとえ海と空と地上を支配しても

まずイスラエル軍の戦いぶりを見ておこう。同軍は制空権と制海権を握っている。

空からは史上最大規模の爆撃を行ってきた。イスラエルがガザで使用した爆発物の総量は10万トンに達している。東京23区の6割程度の面積しかない狭いガザ地区に、これだけの爆弾が降った。

高橋和夫『イランとアメリカ、そしてイスラエル 「ガザ以後」の中東』(朝日新書)
高橋和夫『イランとアメリカ、そしてイスラエル 「ガザ以後」の中東』(朝日新書)

これほど狭い地域に、これほどの量の爆弾が投下された前例はない。広島や長崎に投下された原爆のエネルギーの7倍の量の爆弾である。ガザの人口一人あたりにすると約50キロになる。大きなリュックサックいっぱいに爆弾を詰めて、一人一人の頭の上から落とした計算になる。

またイスラエル海軍が、海岸地帯を砲撃した。そして陸上では最新鋭の戦車とともに歩兵が侵入した。圧倒的な火力でガザの地上を制圧した。

ところが、である。制圧したはずの地域で、2025年10月の停戦まで、本書『イランとアメリカ、そしてイスラエル』ですでに述べたようにハマスによるゲリラ攻撃が続いた。なぜだろうか。それは、イスラエル軍は海も空も地上も支配しているのだが、ハマスが地下にトンネル網を築き、地下を支配しているからだ。

なお2023年10月から2024年11月までの13カ月間、つまり、ガザの爆発からアメリカ大統領選挙までの期間、バイデン政権は、一度も真剣に圧力をかけてイスラエルに停戦させようとはしなかった。バイデン大統領の協力がなければ、イスラエルのガザ戦争は、続けられなかったはずだ。それが2024年の大統領選挙で大きな意味を持った。本書『イランとアメリカ、そしてイスラエル』の後の章で、この件については、さらに言及したい。

【関連記事】
だから習近平は台湾にも尖閣にも手を出せない…中国軍が最も恐れる海上自衛隊の「静かな反撃力」の正体【2026年1月BEST】
なぜイスラエルはいつまで経っても揉めているのか…池上彰「今さら人に聞けない中東問題」キホンのキ
なぜイスラエルは宿敵のイスラム国家と手を組むのか…日本のメディアでは絶対わからない中東情勢のリアル
「本当のお金持ち」はポルシェやフェラーリには乗っていない…FPが実際に目にした「富裕層のクルマ」の真実
「イスラエルの人質捜索のほうが儲かる」ガザに住む男性が妻と6人の子の遺体を諦めざるをえなかった理由