ガザ攻撃から2年が経つ。イスラエルとハマスが停戦に合意してから2カ月、世界の注目は“ある2体の遺体”に集まっている。ジャーナリストの海野麻実は「遺体は、イスラエルの人質で、返還が停戦の条件になっている。この外交交渉の裏側で、報じられない真実がある」という――。

埋まっているガザ民の遺体は「1万体以上」

トランプ米大統領の肝いりでイスラエルとイスラム組織ハマスの停戦合意「第一段階」が発効してからまもなく2カ月が経とうとしている。

しかし、停戦交渉の条件の一つとなっている人質の遺体返還は難航している。

2023年10月7日のハマスによる越境攻撃から、2年以上が経過するなか、パレスチナ側の死者は6万9000人に達しているとされる(ガザ保健省)。

世界の視線が、イスラエル側の人質、残り2人の遺体に注がれるなか、いまだ瓦礫に埋もれた1万人を超えるパレスチナ人の遺体は、搬出される見通しさえ立っていない。

完全に破壊されたコンクリート造の建物の残骸
写真=iStock.com/Roman Novitskii
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「政治化」される遺体の行方

イスラエル首相府は25日、ガザに残されていた人質1人の遺体を新たに受け取ったと発表したが、残る遺体2体はいまだ見つかっていない。

そんななか、ハマスが白い袋に入った遺体を運び出し別の場所へ埋めている様子を捉えたドローン映像が、先月公開された。イスラエル側は、遺体を発見したように装ったとして、これまで重機による捜索が必要だと説明していたハマスが「遺体の所在を把握しながら返還を意図的に遅らせている」と非難。

国際赤十字も「合意の履行が非常に重要な局面で、遺体回収が偽装されたことは残念でならない。かけがえのない身内の安否を案じる家族の気持ちを思うと、とても受け入れられることではない」と、尊厳を持って遺体を取り扱うよう、異例の緊急要請を行った。同時に、「家族の元へ遺体を返す行為を“政治化”すること」を断じて行わないよう注意を促した。

ハマスが遺体の返還を遅らせているとして「合意違反だ」とイスラエル側が主張するなか、先月下旬、あるガザ市民の男性がSNSに悲痛な思いを投稿した。

妻子7人が瓦礫の下に…

男性は、自身の家族の遺体搬出を依頼していた現地の業者から突如、キャンセルされたという。

「亡くなった私の妻と子どもたちを瓦礫の下から引き出すため、私は大きな撤去の機械を手配するためにある建設会社と契約を結びました。

彼らは一回の運搬につき重機とトラックで400シェケル、つまり約120米ドルの賃金を要求し、軽油代は私の負担としました。さらに1ガロンの軽油ごとに200米ドルを超えると言われました。

また、自宅を評価したところ、少なくとも60台のトラックが必要と見積もられました。私たちは合意し、手付金を支払いました。その後、私は準備のために兄弟たちのテントを張り、道を開け、兄弟たちに運搬と賃借と荷下ろしなど多数の負担を負わせました

これらすべての苦労を経たのち、会社に繰り返し連絡したところ、彼らは謝罪してきました。言い訳として『エジプトの委員会などが“占領側のイスラエル人の遺体”の捜索を自分たちに依頼し、魅力的な金額と他の特典を提示してきた』と伝えてきました。」(投稿から翻訳・一部抜粋)