「イランで大変なことが起きている」

気になったのは、高市首相が3月3日の衆院予算委で、自らの1月の衆院解散のせいで「非常に国会日程が窮屈になった」と認めつつ、「イラン攻撃もあり、予算の予見可能性は一層高めるべき時期でもある。何とか早期の成立をお願いできたらと思う」と述べたことだ。ここでイラン情勢を持ち出すのか、と思わざるを得ない。

首相は2月28日夕、米・イスラエルがイランを攻撃した直後にもかかわらず、石川県知事選の現職の馳浩氏を応援するため、予定通り、政府専用機で羽田空港を出発し、午後6時半ごろ、金沢入りしたのだ。演説で「イランで大変なことが起きている。それで飛行機に乗るかどうかだいぶ迷った」としつつも、2021年の総裁選出馬時に推薦人に名を連ねてくれた馳氏への恩義を優先したのだろう。

首相は、北陸新幹線で帰京し、午後10時過ぎに官邸入りし、国家安全保障会議を開いたが、攻撃開始から7時間以上が経ち、イランでは多くの邦人が危険にさらされていた。

3月8日投開票の石川県知事選は、自民、維新両党が推薦した馳氏が、前金沢市長の山野之義氏に敗れた。首相は激怒したと伝えられる。馳氏の力不足が大きいが、与党内からは「高市人気で選挙に勝てるという神話が崩れた」という見方も出ている。

3月9日の衆院予算委で、中道改革連合の小川淳也代表は「第1報から出発まで40分あった。なぜ出発を取り止め、官邸の危機管理センターから指揮を執らなかったのか」と質した。これに対し、首相は「移動中も機内蔵の秘匿通信回線や携帯電話を通じて、リアルタイムで報告を受け、必要な指示を出し続けていた」と反論したうえ、「夜には会議を開催しており、他国と比較しても日本の初動は迅速だった」と自分を正当化した。

これは危機管理の問題なのだが、首相には自らの「不適切な対応」が見えていないのだろう。地方選挙の応援という政務と米・イスラエルのイランへの軍事作戦への対応という公務のどちらを優先するのか、それが国民の目にどう映るかが問われているのである。

「多数派で押し切るべきではない」

衆院議員定数削減問題は、自民、維新の会両党は昨年の臨時国会に1割削減する法案を提出したが、1月の衆院解散で廃案となった。この時は、1年以内に結論が得られなければ、小選挙区25、比例選20の計45議席を削減するとしていたが、今回の法案では唐突に比例選のみ45議席削減と踏み込んだ。

維新の会は「身を切る改革」を言い募るが、比例選での議席獲得比率が高い政党を一方的に不利に追い込むことにならないのか。

先の衆院選では自民、維新両党で計352議席を獲得し、与党の議席占有率は75.7%だった。この数字を基に比例選のみ45議席を削減した場合、共同通信の試算によると、自民、維新両党は計338議席となり、与党の占有率は80.4%に上るという。一方、国民民主党、参政党、共産党、れいわ新選組といった中小政党は、大幅に議席を減らす可能性が大きくなる。