首相官邸関係筋は「高市首相は普段、執務室内の机に座らず、トイレやシャワールームの奥にある応接室にいる(愛煙家という事情もある)。首相秘書官が用件を抱えてドアをガチャと開けても、目に見える範囲にいない」「奥まで入って行けるのは飯田祐二首相秘書官(政務担当、前経済産業次官)くらいしかいない」などと明かす。

首相官邸
首相官邸(写真=首相官邸ホームページ/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

首相経験者の1人は「国会答弁の前に分からないことがあれば、秘書官らに『これ、どうなっているんだ』とか、『そういう経緯があるのか』とか聞いてから、答弁に当たったものだ。高市さんは、資料を読むだけで答弁に臨むんだから、すごい自信だよね」と半ば感心し、半ば呆れてみせた。

実際、高市首相の台湾有事に絡む存立危機事態に関する海上封鎖や邦人救出についての国会答弁は、安全保障の知識不足を露呈し、官僚のブリーフィング(レクチャー)を聞いていれば、あり得なかったシロモノだった。

首相は、官僚が用意した答弁書に自ら赤ペンを入れるほか、場合によってはアドリブで政府見解から外れる答弁をし、物議を醸してしまう。

「国会は政府の下請け機関ではない」

高市首相が昨年の少数与党だった臨時国会の衆院予算委員会で、答弁機会が多すぎると不満を示していたのは、周知の事実だ。自民党が奪回した予算委員長ポストに就いた坂本哲志元農相が、首相への忖度とは別に、予算案の審議時間の短縮を求め、国会改革に逆行してでも予算委を全閣僚出席にしたのは、首相の問題発言をできるだけ少なくしたいという国会対策上の思惑があるといわれる。

実際、2月27日~3月3日の基本的質疑では、閣僚の答弁回数に占める首相の答弁回数は45%にとどまり、昨年の臨時国会の77%から大幅に減少した。

3月3日の衆院予算委は、予算案採決の前提となる中央公聴会を10日に行うことを自民党、日本維新の会の賛成多数で押し切った。

与党は4~6日に省庁別審査を委員長職権で開き、集中審議などを経て、13日の締めくくり質疑、採決を提案している。この分科会を割愛する案だと衆院の審議時間は59時間で、例年の70~80時間に届かないという。

衆参両院の野党国会対策委員長は3日に国会内で会談し、衆参議長に予算審議時間の確保を(翌4日に)求めるとともに、政府に暫定予算編成を提案することを申し合わせた。中道改革連合の重徳和彦国対委員長は、この後の記者会見で「国会は国民から負託された『熟議の場』で、政府の下請け機関ではない」と強調している。

与党は、米国・イスラエルによるイラン攻撃で、原油・エネルギー価格の上昇など国民生活への不安が予算案の年度内成立への追い風になると思い立ち、参院審議のカギを握る国民民主党に協力を求めている。

国民党は11日、榛葉賀津也幹事長が「衆院採決が16日なら賛成する」と自民党の鈴木俊一幹事長に伝えた。だが、与党は聞き入れず、13日の衆院通過に向けてまっしぐらの体だ。首相のメンツがかかる年度内成立が成るかどうか、予断を許さないが、政治的意味も大したことはない。