一方、欧州域内には多くの石炭が存在する。石炭火力の効率化・近代化を図れば、脱炭素との両立も可能なはずだ。しかし、欧州委員会はそうした判断はしない。あくまで石炭は排除すべき燃料のようだ。とはいえ、そのように政治的な判断を優先するならば、急を要した場合に石炭火力を稼働させる術をEUは完全に失ってしまうことになる。
日本は“安定供給”を最優先にするべき
EUは27もの国から構成される国家連合であるため、一度決めた政策を修正することには、多大なコストを要する。司令塔たる欧州委員会の権威が失墜しないようにしなければならないためだ。それゆえに、これまでの政策方針との整合性をどうにか保ちつつ、EUは政策を段階的に修正する必要がある。ゆえに矛盾点も目立つのである。
そうしたEUの姿を、日本は嘲笑することはできない。日本もまた、イラン発のエネルギーショックを受けて、燃料価格や電気料金の引き上げを免れない情勢だ。最優先されるべきはエネルギーの安定供給であるはずなのに、政府の対応は後手に回っている印象が拭えない。少なくとも、減税や補助金の給付でどうにかなる問題ではない。
東日本大震災という大惨事を受けて、日本でも原発に対する慎重な見方が広がった。それから今年でもう15年である。時代が冷静さを取り戻したことや経済環境が変化したことから、日本でも原発の再稼働を進めるべきという意見が強まっている。一方、政府の対応は俊敏さに欠けている。原発に携わる人材が不足していることもあろう。
政府は3月10日に日本成長戦略会議を開催し、政府が掲げる官民投資17分野のうち、優先的に支援する61の製品・技術をリストアップした。とはいえ、そもそも安定したエネルギーなしに、有効な産業支援など不可能である。政府には、エネルギーの安定供給に向けた具体的な政策方針を迅速に打ち出し、実行することを期待したい。
(寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)


