「成功」「失敗」に囚われるリスク

多くの場面で、私たちは無意識のうちに、「できたか、できなかったか」「うまくいったか、いかなかったか」という二元論で自分の状態を捉えてしまいます。

打てた試合は良くて、打てなかった試合はダメ。集中できた日は前に進み、できなかった日は前進していないように思ってしまう――。

しかし、そうした捉え方はわかりやすい一方で、本番になればなるほど注意を結果や評価へと引き寄せ、集中を不安定にしていきます。

結果や出来を基準にしてしまうと、プレーや行動は常に評価の対象になります。一つうまくいかない出来事が起きただけで、それまで積み重ねてきた感覚や手応えまで、まるごと否定されたように感じてしまうのです。

すると注意は、今取り組んでいる行動そのものから離れ、「取り返さなければ」「挽回しなければ」という発想へと向かっていきます。その時点で、注意は一点にとどまれなくなり、集中はあちこちに飛び回り始めます。

この捉え方から距離を取る一つのヒントが、目標や戻り先を「結果」ではなく「積み重ねられる対象」に置くことです。

周東選手が毎打席、集中できる理由

ホークスの周東佑京選手は、目標設定の一つを打率ではなく安打数に置いています。打率はどうしても「上がった」「下がった」と数字に一喜一憂しやすく、感情が揺れ動きやすい指標です。一方で安打数は、一本一本を積み重ねていくものです。打てなかった打席があったとしても、次の打席でまた一本を狙いにいく。その思考に自然と切り替えやすいのです。

周東選手はその構造を理解したうえで、意図的に安打数という目標をシーズンの初めにセットし、シーズン中も常に意識し続けていました。

ここで重要なのは、安打数が増えているかどうかを逐一確認することでも、「打てたか、打てなかったか」を評価することでもありません。ただ、安打数という積み上げ型の目標を置くことで、注意は評価ではなく「次の一本」に向きやすくなります。結果が出なかった打席があっても、その出来が次の打席の意味を奪うことはありません。やることは変わらず、同じ姿勢で次に向かうだけです。

ドット絵の画面で、勝ち負けの勝ちを示す「WIN」が点灯している
写真=iStock.com/filo
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