2025年の日本シリーズで、福岡ソフトバンクホークスは5年ぶり12度目の日本一に輝いた。球団のメンタルパフォーマンスコーチを務める伴元裕さんは「結果を意識するよりも、その場で取り組んでいる行動に注意が向いているときのほうが、力が発揮されやすい」という――。

※本稿は、伴元裕『集中力革命 ブレても力を発揮するメンタルの技術』(Gakken)の一部を再編集したものです。

優勝パレードで、沿道のファンの歓声に応えるソフトバンクの(左から)周東佑京選手、孫正義オーナー、小久保裕紀監督=2025年11月24日、福岡市内
写真=時事通信フォト
優勝パレードで、沿道のファンの歓声に応えるソフトバンクの(左から)周東佑京選手、孫正義オーナー、小久保裕紀監督=2025年11月24日、福岡市内

集中力は永遠には続かない

試合の終盤で大事なプレーを前にして、周囲の音が少し遠くなる。仕事なら、プレゼンの途中で一瞬言葉が詰まり、視線が泳ぐ。そんな瞬間を味わったことのある人は少なくないでしょう。

そんなとき、「今、少しズレたな」と、注意が逸れたことに気づけたとしましょう。集中できていないというより、注意がどこかに引っ張られる感覚です。

そのズレのあと、注意を戻せるときもあれば、戻れないときもあります。その違いは、どこから生まれるのでしょうか。

戻れないままでいるとき、頭の中では直前のミスや先の結果、あるいは「ちゃんとしなければ」という思考が立ち上がります。気づけば、何をするかよりも「今の自分は大丈夫か」という確認に注意が向いてしまうわけです。

一方で、自然に戻せるときも、不安や緊張が消えているわけではありません。ただ、その中でも「今は、これに注意を戻す」という行動が、身体感覚としてわかっています。だからズレたあとも、考え直すというより、身体が自然にそこへ戻っていきます。

一度逸れた注意を元に戻せるか

この違いは、才能や集中力の強さによるものではありません。ましてや、これまでの努力量や真面目さの差でもありません。多くの場合、分かれ目になっているのは、「注意を戻す先が定まっているかどうか」です。

戻れないままでいるときも、何も考えていないわけではありません。むしろ、よく考えてきた人ほど、「正しくやろう」「整えよう」として、注意を管理しようとします。

ただし、注意を戻す先が定まっていないと、戻ろうとすればするほど、注意の行き先(戻り先)があいまいになってしまうのです。

逆に、自然に戻せるときも、良い結果を目指していないわけではありません。勝ちたい、うまくやりたい、評価されたい――。その思いは同じです。

ただ、結果にだけ注意を向け続けてはいません。「結果につながると思える行動」に、注意の戻り先を置いているのです。だから、「今、ここに戻れば大丈夫だ」という感覚が先に立つのです。