選手たちは「行動」に意識を向けていた

2025年のホークス春季キャンプで、約60人の選手に、直近のベストパフォーマンスを振り返ってもらい、そのときプレー中に何に意識を向けていたのかを、できるだけ具体的に書き出してもらいました。

その結果、60人中60人、全員が勝ちたい、打ちたい、抑えたいといった「結果」そのものではなく、その瞬間の「プレーの中身(タイミング、ゾーン、リズムなど)」に注意を向けていたと答えたのでした。

この事実が示しているのは、「選手たちが特別なことをしていた」という話ではありません。分析結果を共有した際には、「自分では結果を意識していたつもりだった」と驚く選手も少なくありませんでした。

プレー中に、意識して行動へ集中しようとしていたわけでも、何かを変えようと決めていたわけでもない。ただ、うまくいっていた場面をあとから振り返ってみると、注意は結果ではなく、自分のプレーの中に向いていたのです。

「勝ちたい」と思うほど集中できなくなる

ここで注目したいのは、選手たちが向けていた注意の先に、共通した条件があったことです。それは、「今」「自分で」「できる」ものである、という点です。

結果や評価は、強い引力を持っています。勝ちたい、うまくやりたいと感じた瞬間、注意は自然と未来へ向かいます。

しかし、結果は「目指す方向」にはなっても、「注意の戻る場所」にはなりにくいもの。なぜなら、結果はこの瞬間に自分でコントロールできるものではないからです。結果に注意を戻そうとしても、具体的な足場が見つからず、「今の自分は大丈夫か」という確認や管理に注意が向いてしまいます。その不安定さが、「集中できない」という感覚を生むのです。

一方で、行動は違います。視線をどこに置くか、どのリズムで動くか、どこに力を乗せるか。これらはすべて、「今、この瞬間に」「自分で」「選び直すことができる」ものです。行動そのものだけでなく、行動につながる感覚や意図も含めて、注意を戻すことができる対象です。

結果は、行動の積み重ねから生まれます。行動の中に戻り先があれば、注意は結果そのものではなく、その結果をつくる過程へと向かいます。だからこそ、注意が逸れたあとも、「ここに戻ればいい」という感覚が先に立ち、迷うことなく注意を戻すことができるのです。

青空の下、しっかりボールをキャッチしたグローブをはめた手
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