「大人が届けたい本」と「子どもに届く本」は両立できる

風向きが変わったのは、ある司書の方が新聞の書評欄に、小学3年生の児童がこの本を面白いと言っているようだというエピソードを投稿してくれたときでした。それが「お墨付き」となり、だんだんと書店からも「注文してみます」と言っていただけるようになりました。その後、9巻「タイタニック号」のテーマでブレイクし「市場がプロダクトを受け入れた」という実感が持てたのを覚えています。

メアリー・ポープ・オズボーン(著)、食野 雅子(翻訳)、甘子 彩菜(イラスト)『マジック・ツリーハウス』(KADOKAWA)
メアリー・ポープ・オズボーン(著)、食野 雅子(翻訳)、甘子 彩菜(イラスト)『マジック・ツリーハウス』(KADOKAWA)

いまや本シリーズは、教育の現場からも高く評価されています。「子どもが本好きになる」という点の他に「学びになる内容」という点からも支持されているようです。この本では、主人公のジャックは魔法の杖を振ってピンチを解決するのではなく、リュックから取り出した本で地道に調べ、ノートにメモした「知識」で道を切り拓き、さまざまな時代や国を冒険していきます。

この「調べ、発見し、活用する」という構造が、今でいう「探究学習」のロールモデルとなっていたのです。いまでは、学校図書館でも多く採用され、探求学習にも活用されることもあると聞きます。

物語を読み進めるうちに、いつの間にか歴史や地理、科学の知識を自分のものにしている「生の学びの疑似体験」。徹底した行動分析によって「子どもが一人で読み切れる」ように設計したからこそ、彼らは自然と、本を通して自らの好奇心で知識の扉を叩くことができたのだと思います。

「導線設計」さえすれば子どもは本を読む

「子どもが本を読まない」のではなく、子どもが自然と手に取りたくなるような、彼らの身体感覚や生活リズムに寄り添ったプロダクトが足りなかっただけ。

『マジック・ツリーハウス』が証明したのは、徹底したユーザー分析と、それに基づいた真摯なプロダクトデザインがあれば、子どもたちは驚くほど熱心に本を読み、そこから豊かな学びを吸収していくという事実です。

大人が「読みなさい」と押し付けるのではなく、子どもが自らワクワクして扉を叩く。この導線設計こそが、四半世紀近く支持され続ける、そしてこれからの時代に最も求められる「読まれる本」のあり方なのではないでしょうか。

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