漢字は平仮名に開かず、ルビを振る
さらに、文字組みのデザインも「読むストレス」を徹底的に排除しました。わが子の友人たちを実際に自宅に招いてリサーチしたところ、興味深いことが次々とわかりました。
漢字を無理に平仮名へ開きすぎると、単語の区切りが視覚的に捉えにくくなり、逆に可読性が落ちてしまうので、無理に開かず、すべての文字に大きなルビを振る「総ルビ」形式を採用しました。また、目の動きや集中力の持続時間を観察し、最適解として導き出したのが「16級」という文字サイズでした。
子どもの小さい手や弱い握力でどのように本をつかみ開いているかも観察し、邪魔にならないように本の小口にはゆとりを持たせたり、ノド(本を開いた際の中央の綴じ目の部分)を広く取るなどの配置上の工夫もしています。挿絵についても、まずはパラパラと絵だけを拾い読みして内容をつかむという子ども特有の読み方を見て、目につきやすい大きなカットを多く入れる形をとりました。
キャラクターデザインについても、あえて「アニメや漫画のキャラっぽくしてほしい」とイラストレーターの甘子彩菜さんにお願いしました。児童書といえば上品な絵画調のタッチの絵が選ばれることが多かった当時のなか、店頭に並んだとき、子どもの目が自然と留まるような吸引力を持たせたかったからです。
ただし、恐竜の骨格、出てくる歴史的建造物などの描き方の「正しさ」は地道に研究し尽くして描き、「見た目は親しみやすく、中身は確か」という児童書としての質も維持しました。
書店からは「置けない」と言われたが…
発売当初、この「これまでにない仕様」の本は、既存の児童書流通の中では戸惑いを持って迎えられました。「漫画のような本は置けない」といった声もあり、最初は厳しい状況が続きました。図書館流通をベースにする従来の児童書の伸長の仕方では芽が出なかったので、書店での店頭展開に注力してアプローチを重ねました。
そんな中、当事者である子どもたちの反応は大人たちとは全く異なりました。店頭で「面陳(表紙を見せて陳列)」さえすれば、子どもたちが吸い寄せられるように棚へ寄ってきて、「これ買って!」と目を輝かせる。大人が定めた「良い本の定義」とは別に、ユーザーである子どもたちは、直感的に自分たちのためのプロダクトであることを見抜いていたのです。



