「経営陣だってバカじゃない」
「わかった。じゃあ、明日からはお前がリクルートの社長だ。
みんながお前の意思決定に従う。
その代わり、すべての責任はお前が背負う。
それで……お前だったら、あの起案はどう意思決定する?」
呆然としている私にかまわず、部長は続けました。
「『やらないよりはやったほうがいい』なんて、みんなわかってるよ。でも、あの取り組みには◯◯という問題があった。××にも配慮しないといけない。あのプランを採択するということは、経営の重要テーマである△△にも影響が出る。……で、そういうあれこれのトレードオフに、お前ならどう対処するの?」
恥ずかしながら、私は何も答えられませんでした。
そんな私を見て、当時の上司はこう言ったのです。
「浜岡、経営陣だってバカじゃないんだ。もちろん、違うと思ったことにはっきり『違うと思います』と伝えることも、われわれの大事な役割だよ。でも、その前に『経営陣が何を考えて、何に悩んでいるのか』をもっと考えてみるべきなんじゃないの?」
「ゴール・論点」があいまいだと「やろう!」と言えない
経営陣だって起案者の想いをわかっていて、「できることならやらせてあげたい」と思っています。
しかし、経営に上がってくるテーマは「あちらを立てればこちらが立たず」のトレードオフがあるもの、それなりにリスクの大きなものばかりです。
そういう板挟みの中で、何を大事にして意思決定を下すのか(論点)を絞り込むのが「経営会議」という場です。そして、その会議がうまく機能するためには、しかるべき論点がすっかり洗い出されていなければなりません。
「何もわかっていないのは自分自身だった」と気づかされ、穴があったら入りたい思いでした。
そして私はふと思いました。「はたして自分は、その議論が滞りなく進むように、論点を整理しきれていただろうか?」と――。
いま振り返ると、当時の私は、自分の仕事の重大さをわかっていませんでした。
経営企画部に異動したばかりだったこともあり、現場から上がってきた起案を「いかに通すか?」しか考えておらず、そのせいで起案書のチェックもかなり甘くなっていたように思います。

