歪んだイメージを作り上げ自国民を煽る

侵略の枢軸:中国、北朝鮮、ロシア

高市の描像が最も歪められ、最も意図的に兵器化されるのは、CRINK――中国(China)、ロシア(Russia)、イラン(Iran)、北朝鮮(North Korea)の4カ国においてである。

中国は高市を、真の警戒と打算的な日和見主義の揮発性混合物をもって見つめている。北京は、台湾問題における彼女のタカ派姿勢、強化された抑止力の提唱、そして中国を戦略的挑戦として名指しする姿勢に対して正真正銘の懸念を抱いている。

しかし同時に、中国共産党は高市のプロフィールがプロパガンダ上の贈り物であることも認識している。北京は数十年にわたり、日本を「悔い改めない軍国主義国家」という“物語”の中で語ってきた。

安倍との結びつき、靖国参拝の経歴、率直なレトリックを持つ高市は、中国国営メディアが最小限の労力で操作できる原材料を提供する存在だ。その主目的は日本を国際的に孤立させることではない。

第一の目的は国内向けだ。ナショナリズム感情を煽り、経済停滞から国民の目をそらし、歴史的な敵から中国を守る守護者としての中国共産党の正統性を強化すること。北京は日本が平和的な民主主義国家であることを十分に知っている。

しかし、日本軍国主義の神話を長年にわたって構築してきたがゆえに、保守的な女性首相の登場は、使わずにいるにはあまりにもったいない存在なのだ。

令和7年10月31日(現地時間)、APEC首脳会議に出席するため韓国を訪問中の高市総理は、中華人民共和国の習近平総書記(国家主席)と首脳会談を行いました
令和7年10月31日(現地時間)、APEC首脳会議に出席するため韓国を訪問中の高市総理は、中華人民共和国の習近平総書記(国家主席)と首脳会談を行いました(写真=内閣官房内閣広報室/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

北朝鮮は同じ台本に基づきながら、より鋭い実存的動機をもって行動する。平壌は金体制の全体主義的支配を正当化するために常に外敵を必要としてきたが、日本は長くその役割を果たしてきた。

高市のタカ派的イメージは、北朝鮮国営メディアが次のような“ストーリー”を構築することを可能にする。日本の帝国主義的な過去は歴史的記憶ではなく、現在進行形の現実であり、朝鮮半島の分断を説明し正当化する未完の事業である、と。強く自信に満ちた日本の首相は、平壌にとって、脅威はいまだ去っておらず朝鮮人民は指導者のもとに結束せねばならない証拠なのだ。

ロシアは、長期的な構造的衰退と国際的影響力の低下に直面する大国として、中国と同様のアプローチを取りつつも、異なる戦略的理由に基づいて行動する。モスクワは高市を軍国化に邁進する指導者として描くが、その特徴づけが虚偽であることを十分に承知している。

その目的は3つある。敵対勢力に包囲されていると喧伝し国内ナショナリズムを醸成すること、深化する中露連携の一環として中国のプロパガンダを補完・増幅すること、そして最も重要なのは、日本の防衛力近代化を地域の脅威への対応としてではなく、ロシア・中国との米国の戦略的競争の一環として枠づけることだ。モスクワにとって、高市は日本の問題ではない。ワシントンとのより大きな争いにおける、都合のよい舞台小道具なのだ。

高市早苗を報じるのではなく「創り上げる」

結論:希望と歪曲のはざまで

世界は高市早苗をどう見ているか。

これは結局のところ、世界自身の分断を映す鏡にほかならない。日本の友好国と同盟国(シンガポールからキャンベラ、ニューデリーからワシントンまで)にとって、彼女は希望、安定、そしてかつて故安倍晋三が体現した断固たる長期的リーダーシップの再来を意味する。中国と米国の双方に対してバランスを取りながらルールに基づく秩序を守る。そうしたリーダーシップへの期待だ。

一方、CRINKの侵略の枢軸にとっては、高市はもっぱら対米戦略的競争のレンズを通してのみ眺められ、その姿は各国内のプロパガンダと地政学的工作に奉仕するよう意図的に歪められている。高市の実像は決して伝えられない。

この2つの肖像の間にある溝は、国際報道の真実性を少しでも気にかける者にとって、深い懸念を呼び起こすはずだ。中国国営メディアに存在する「高市」と、官邸に存在する「高市」は、まるで別人だ。どちらが真実でどちらが捏造かを見極めることは簡単なことではなく慎重にならざるをえない側面がある。

古い諺が警告するように「百聞は一見に如かず」だ。だが、現代の地政学においては、それすらも十分ではない。なぜなら、国家とそのメディアは外国の指導者を「報じる」のではなく「創り上げる」のだから。

見ているものが現実なのか、それとも誰かの利益のために製造されたものなのかを問い続けること――それこそが、情報の時代における最も基本的なリテラシーである。

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