iDeCoで注意すべき“3つのポイント”

さらに、Aさん夫婦はiDeCoへの拠出も検討されていました。iDeCoに拠出できる金額の考え方は基本的にNISAと同様ですが、iDeCoはNISAにはない制約があります。なお、企業型DC(企業型確定拠出年金)についても同様です。企業型DCをされている場合は、iDeCoを企業型DCに読み替えてください。

第一に、途中で引き出せないことです。NISAはいつでも売却や出金ができますが、iDeCoは原則として60歳まで引き出しができません。NISA以上に資金の流動性は下がりますから、「なんとなく」で拠出額をふやすと危険です。

第二に、受取時の出口設計にNISA以上の配慮が必要なことです。特に注意したいのが、iDeCoにまつわる税制改正です。近年はiDeCoをめぐる見直しが続いており、受け取り方やタイミングによっては、税負担が増えるケースも出てきています。

例えば、2026年1月からは、iDeCoや企業型DCの老齢一時金と退職金を両方受け取る場合の税務上の取り扱いが見直されました。いわゆる「5年ルール」が「10年ルール」に変わったことで、受取時期の組み合わせによっては、退職所得控除の使い方に影響を受け、手取りが減る方が出る可能性があります。

第三に、運用中の税について不確実性が残る点です。税制ではiDeCoの運用資産は特別法人税(1.173%)の対象となっていますが、現在は凍結されており、実質的に非課税で運用されているかたちです。この凍結措置はこれまでに延長を繰り返しており、令和8年度の税制改正大綱でも延長する内容が示されていますが、依然廃止されていません。運用資産の課税に不透明さが残っています。

投資は「ペース配分」「スタート前の準備」が肝心

iDeCoは2026年12月から掛金上限額が引き上げとなり、会社員は月6.2万円まで拠出できる予定です。しかし、掛金上限額を基準に拠出額を決めると、将来の制度改正の影響を真正面から受ける可能性があります。拠出額を決める前に、勤務先の退職金制度やキャリアプランを確認してください。

【図表1】iDeCoの拠出限度額の引き上げのイメージ
厚生労働省「2025年の制度改正」より
【図表2】iDeCoの拠出限度額の引き上げのイメージ
厚生労働省「2025年の制度改正」より

Aさん夫婦はその後、家計の状況を確認し、目的と現在の資産状況にあわせて投資への拠出スケジュールを見直していくことになりました。具体的には、今ある資金の目的を明確化し、それぞれの目標に応じた積立額を設計。NISAへの拠出額を減額するとともに、iDeCoにも分散。支出の見直しも実施しました。

NISAやiDeCoは資産形成に有効な制度ですが、投資は例えるなら長距離マラソンのようなものです。フルマラソンでスタート直後に全力疾走すれば、数キロで息切れしてしまうように、走り抜くためにはペース配分とスタート前の準備が肝心です。

そのためには、投資額を先に決めるのではなく、生活防衛資金や近い将来の支出、教育費や老後資金の目標額と時期を整理し、家計全体のコンディションを整えることが重要です。