NISAで「教育費の準備」はリスクが高い
長期にわたり安定した資産形成を実践していく上では、目的に応じたリスク配置となっているか、という視点も欠かせません。
老後資金と教育資金は必要となる時期が異なります。したがって、許容できるリスクも変わります。そのため、本来はそれぞれの目的と時間軸に応じて、運用方法を分けて考える必要があります。ところが実際には、目的と運用状況がちぐはぐになっているケースが少なくありません。
Aさん夫婦の資産状況も、まさにその状態でした。
株式は価格変動の大きい資産であり、長期間の運用を想定すべき資産です。つまり、短期間で現金化する可能性がある資金には向きません。一般的に5〜10年以上先に使う予定の資金を「長期資金」と言いますが、株式100%で運用するなら、例えば老後資金など、20年以上先に使う予定の資金の運用手段としたほうが相性はいいでしょう。
Aさん夫婦は、教育費の準備も想定してNISAで投資をしていましたが、運用内容は株式で100%運用する株式投資信託のみ。一方、教育費の支出時期として想定されていたのは約10年後です。教育費は期日が決まっており、かつ金額を調整しづらい支出です。教育費という目的に対しては、リスクが高い運用内容でした。
NISAは運用益が非課税となることから、資産形成にあたっては優先して活用したい制度です。ただし、目的ごとに資産を分けて運用しようとすると、使い方には工夫が必要です。制度を使うこと自体が目的になると、目的に合った運用設計が後回しになりやすい点には注意が必要です。
「生活防衛資金」を脅かす拠出だった
投資の原則は、「長期資金」もしくは「余裕資金」で行うことです。
長期資金とは、少なくとも10年以上使う予定のないお金です。余裕資金とは、万一減っても生活には影響をあたえない、いわゆる「ゆとり資金」です。
ご家庭の資金を分類するためには、資金計画を立てることが重要です。まず優先すべきは緊急生活資金と時間軸が短いお金の準備です。具体的には、日々の生活のために必要なお金、数年以内に必要なお金があげられます。具体的なスケジュールと一緒に金額を確認していきます。これらが確保できて初めて、投資にあてられる資金がみえてきます。
Aさん夫婦の場合、預貯金500万円のうち、約半分は「生活防衛資金」として確保すべきお金でした。なお、生活防衛資金の目安は生活費の3カ月分~1年分です。くわえて、自動車の買い替え資金や第二子の小学校入学準備として2年後には約300万円が必要になることが見込まれていました。
つまり、実態は必要な金額を割り込んでいました。さらに投資のために預貯金を取り崩していたことで、預貯金額は毎年減り続けており、昨年は120万円の取り崩し。今年も同じペースで続ける場合は、さらなる状況の悪化が懸念されました。Aさんが投資にあてていたお金は、本来は投資にあてるべき資金ではなかったということです。

