東京再開発エリアの光と影
SNSではすでにたびたび話題にあがっていることだが、晴海や豊洲など東京のいわゆる「エリサラ」と呼ばれる人びとのために再開発されたエリアでは、コンビニや飲食店が撤退してしまったり、大型商業施設などに入っている大手チェーン店では、時給をどれだけ上げてもバイトがなかなか見つからなくなってきていて、そのエリアに住む人たちの暮らしの利便性にも影響が出始めている。都市部に若年層・低所得層が住める街がなくなってかれらは外縁へとどんどん押し出されていき、「わざわざ遠くから働きに来てくれる人」がいなくなってしまったのである。
晴海・勝どき地区では、平均オフィス空室率のコロナ禍からの戻りが、東京23区の他の地区と比べて鈍いという(日本経済新聞「オフィスビル、晴海・勝どきに異変 『立地重視』で空室目立つ」2025年5月20日)。同記事には、「背景には採用強化に向けてオフィス立地の重要性が高まっていることがある」と書かれていた。オフィス立地が採用に影響するのであれば、コンビニや外食のアルバイト店員の確保が困難になるのも十分に予想できる。
スーパー、コンビニ、外食、物流、医療、介護などの収入は「その稼ぎで都市部(勤務地)の近郊に暮らす」のがほとんど無理になってきている。都市部のコンビニ店員はどんどん外国人と高齢者になっているのは偶然ではない。SNSで東京23区の街の格付けを無邪気に競い合って「勝ち組Tierリスト」などをつくっている人たちは大勢いるが、かれらのような金持ちエリートが暮らしてどんどん住宅価格を高騰させ、エッセンシャルワーカーを追い出してしまえば、「見た目だけ華やかなだけで、コンビニや病院すらまともに開いてない、上質な暮らしとは程遠い街」になってしまうリスクがある。
これがアフォーダビリティ・クライシスだ。
小池知事の「アフォーダブル住宅」
小池百合子・東京都知事は、子育て世帯を対象にした安価な賃貸住宅「アフォーダブル住宅」を提供する。相場のおおよそ2割引の格安賃貸で提供するものだ。
いま東京では都心部どころか、市部もっといえば隣県の都市(川崎・大宮・川口・津田沼など)にもすでに住宅価格高騰の波が押し寄せていて、若年低所得層はどんどん外へ外へと押し出されている。小池都知事は「アフォーダブル住宅」政策で、このクラウドアウトをどうにか堰き止めようとしているのだが、相場の2割引程度で奏功するのかは微妙なところだ。
日経新聞の記事によると東京23区のマンションの築5年以内の転売率は平均してわずか2.49%だった(日本経済新聞「東京のマンション短期転売、都心に集中 千代田区は23区平均の2倍」2026年2月24日)。東京の住宅価格の高騰は(超ラグジュアリー物件などを除けば)大部分は実需つまり「住みたい人が多い」からこそ起こっているということだ。
その実需の高まりに人件費や資材費や地価の高騰が乗っかっていまの価格上昇が起こっている。もとより先進各国の最大都市の家賃相場で比較すれば東京はじつは「安い」ほうで、まだまだ上がる余地があるということだ。

