家賃が高い街のコンビニで働く人はいるのか
いま東京23区では、ワンルームが10万円、カップル向けが20万円、ファミリー向けが30万円弱まで高まっている。この相場は引き続き上昇する。ワンルームが15万~20万円、カップル向けが30万円、ファミリー向けが45万円くらいまで上昇するのはありえると覚悟しておいたほうがよい。実需に裏打ちされた値上がりは市場原理であるとしても、ではそのとき、だれがかれらの住まう街のコンビニで、病院で、配送センターで、飲食店、清掃業で働くというのか?
バブルではなく実需での高騰が起こっている以上、90年代のように総量規制で弾けさせるとかそういうことはできない。そうではなく、空き家を利活用したり、公営住宅をリノベーションして提供したりと、供給量に厚みをもたせることで価格高騰を抑えていく必要がある。だが東京都心部の観光地にほど近い下町エリアでは、古家や土地を活かして供給を増やすどころか、地権者が高すぎる相続税を支払えずに手放し、土地を手放してしまったところに外国人(海外法人)が購入して、外見は賃貸マンションそっくりのインバウンド向け民泊施設を建設するような流れが活発化している。それをやればやるほどさらに周辺の地価も物価も上昇する。堂々巡りだ。
電車で2時間かけてバイトには来ない
住宅価格の高騰も、民泊の急増も市場原理に従っているだけといえばそのとおりで、規制したり禁止したりするべきでないことは自由主義の原則だ。
だが一方で、市場原理に任せていれば必ずしもただしい結果がもたらされるとは限らない。人間の移動には時間がかかるからだ。たとえば首都圏からはるか遠く、電車で2時間近くかかる街までクラウドアウトされた若者が、わざわざエリサラの暮らす豊洲や恵比寿や中目黒くんだりまでバイトしに行きたいと思うかといえば、答えはNOだ。
その街から若者やエッセンシャルワーカーを追い出して遠くに住まわせてしまうのには限度がある。学生やエッセンシャルワーカーが東京中心部からクラウドアウトしてもまだ都市生活者たちの住みよい暮らしを支えるために働きに来てくれるのは片道1時間くらいの距離が本当に限界ギリギリで、それ以上になるとかれらは地元で仕事を探し始める。

