父の「財務」と息子の「管理」が融合
転機が訪れたのは、独立から約10年後の2005年。父と子の会社が事業統合した時である。蓋を開けてみると、父の会社はバブル期の成功体験が抜けず、「売れるかもしれない」という見込み生産で大量の不良在庫を抱えていた。一方で、重たい借金はない。父は創業以来、「一枚の手形も振り出さない」堅実経営でキャッシュを回していたのだ。
「父は会社一本のために蓄財し、引き際も見事に決めた。すごい経営感覚です」と武典さんは語る。父が残した「財務基盤」と、息子が培った「在庫管理のノウハウ」。この2つが融合したことで、コルバは筋肉質な組織へと生まれ変わった。もし最初から息子が家業に入っていたら、古い体質に飲み込まれ、共倒れしていたかもしれない。あえて「継がせない」という選択が、結果として事業を存続させたのである。
日本製にこだわるのは「感情論」ではない
現在、コルバのショールームには3000近い型紙のストックがある。それを支えるのは、神業のようなスピードで大量の品を仕上げる80代の熟練工から、駆け出しの30代若手まで、関西を中心とした約20人の職人ネットワークだ。
職人が手掛けた製品を工房に集約してラストスパートをかけ、本社スタッフが均質で上質な「完成品」へと一気に仕上げていく。職人の工房スタッフや社内の検品チームまで含めると、総勢146人がこの生産に携わっている。
この厚みのある体制があったからこそ、コロナ禍で他社の営業が止まった際にも「国内で作れる」という強みを発揮し、一気にシェアを拡大できたのだ。
武典さんは、日本製にこだわる理由を「感情論ではなく、算数の問題」だと言い切る。
「例えば1万円の財布があるとします。海外からの輸入品であれば、利益の大半は海外に流出し、日本に残るのはわずか。しかし、日本製であれば、生地代、職人の工賃、運送費、そのすべてが国内で回る。1万円の経済効果のほとんどが日本に残るんです」


