なぜ謝罪も訂正もしなかったのか
もちろん、まずもって学歴を詐称してはいけない。卒業していない大学の「卒業証書」を示すなど言語道断であるし、今回でいえば、田久保氏によって東洋大学が被ったレピュテーションリスクは計り知れない。たとえ魔が差してしまったとしても、謝罪し、訂正しなければならない。
ところが、田久保氏は、謝罪も訂正もしなかった。そこには、彼女のさまざまな思惑があるのだろうし、その独特な感性のなせるわざなのだろう。
それでも、民主主義の仕組みにおいて、多くの有権者から正当な選挙を経て選ばれた以上は、同じく住民の代表である議会には真摯に対応しなければならない。最低でも伊東市議会に対しては、誠心誠意、向き合うべきであったのではないか。
それなのに、よりにもよって、その最低ラインであるはずの議会を侮蔑したような態度を続けたばかりか、上記のような強大な権限と位置付けを持つ百条委員会をもコケにしたのでは、もはや、庇いようがないのではないか。
学歴詐称の「重すぎる代償」
公職選挙法では、「虚偽事項の公表罪」は、「2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金」が定められており(同法第235条1項)、先に見た地方自治法違反への罰則と比べると重い。けれども、産経新聞がまとめたように、「政治の世界では過去にも多くの学歴詐称疑惑が取りざたされてきた」ものの、起訴猶予処分になったり、不起訴処分になったり、と、学歴を偽っていたとしても、職を追われたケースは多くはない。
とすると、地方自治法違反による「書類送検」の意義は、ここにある。すなわち、「学歴詐称」がこれまでの経緯では有罪判決どころか刑事訴追すら多くないのに対して、そのラインを突っ張ったばかりに、かえって、より固いと見られる罪に問われかねない。
すぐに謝っておけば、起訴を免れるのはもちろん、ことによると、その職を追われずに済んだのかもしれない。にもかかわらず、謝罪を拒んだばかりに、その重い、いや、重すぎる代償を、田久保氏は、払わされているのではないか。行政府の長でありながら、議会を軽視した。政治家として根本的な資質を欠いていると言わざるを得ない。墓穴を掘ったのではないか。

