薬が1種類増えるだけで、転倒リスクが2倍
東大病院老年病科の調査では、薬を4種類飲んでいる人のうち約20%の人が、1年以内にふらつきや意識がぼんやりすることによる転倒といった事例を経験しています。薬の数が5種類になると、その割合はおよそ40%に跳ね上がります。
薬が1種類増えるだけで、転倒リスクが2倍になるのです。転倒から骨折、寝たきり、認知症へとつながるケースも決して少なくありません。
ですから、60代以降にまずするべき「断捨離」は薬です。
日本の高齢者は、世界的に見ても多くの薬を日常的に服用しています。まさに「薬漬け医療」と言ってもいい状況です。
しかも、日本では2700種以上の薬が「運転に支障をきたす恐れがある薬(運転禁止薬)」に分類されています。これは日本で処方されている薬の約4分の1を占めます。このなかには、睡眠薬や精神安定剤、さらに一般的に高血圧や糖尿病の治療に使われる薬も含まれています。
たとえば、血糖値を下げる薬は低血糖による意識障害を、高血圧の薬は血圧が下がりすぎることで、ふらつきや意識低下を引き起こすことがあります。
実際、私自身も高血圧と糖尿病の持病があり、血圧を下げる薬を飲んでいましたが、その薬を飲むと頭がぼーっとしてしまい、調子が悪くなっていました。そこで、今は薬を減らし、正常値(医学的基準値)よりもやや高めの血圧数値でコントロールするようにしています。
納得できるまで説明を求め、遠慮せずに相談
本来は、「薬で血圧が下がると、意識がぼんやりすることがある」などの説明が必要ですが、医師のなかには数値だけを見て薬を出し、患者に詳しい説明をしない人もいます。
高齢になると肝臓や腎臓の機能が落ち、薬の代謝や排泄が遅くなっていますから、薬が体内に長く残って副作用が出やすくなるのです。
アメリカの大規模な統計によると、高齢者の重大事故の約80%は、運転に影響を与える薬の服用が関係しているそうです。
もし、処方された薬を飲んで具合が悪くなる、ふらつくといった症状が出たときは、「薬だから仕方がない」と我慢して飲み続ける必要はありません。そんなときこそ、遠慮せずに医師に相談し、「本当にこの薬が自分に必要なのか」を確認してみてください。
医師の説明が難しい、あるいは十分に教えてくれないと感じた場合は、こちらがメモをとったり、スマホで録音する姿勢を見せたりするだけでも、医師がわかりやすく説明し直してくれることも案外多いものです。不安や疑問をそのままにせず、納得できるまで確認する姿勢が大切です。
それでも、十分な説明のないまま医師が薬を見直してくれないようだったら、病院を変えてもいいでしょう。医師や病院とのつきあい方も、受け身のままではよくありません。
「我慢するのが当たり前」とは思い込まず、納得できるまで説明を求め、遠慮せずに相談する姿勢が大切です。自分が飲む薬や治療について医師任せにせず、納得のいくものを自分自身で選んでいくこと。それが、これから先の健康を守るために必要な心構えです。

