なぜ「デメリット」を説明しないのか

地域や社会の分断は「煽られて」発生したものではなく、企業側の要望に偏った、政府による「持ち込まれた“分断政策”」の結果とも言える。外国人の受け入れ政策は本来、いずれ“移民の国”になるという、不可逆の覚悟が必要なのだ。問題は、政府や自治体が共生政策の理想を謳うだけで、どんなデメリットがあるのか、説明すらないことだ。日本中の自治体に外国人街を増やしていくことが共生推進なのだろうか。

このような受け入れ政策に、国民が不満や不安を口にすると、「多文化共生」への反抗と受け止められ、排斥・排外主義や差別主義のレッテルすら貼られてしまう状況となる。しかも、本来は、社会の分断や格差社会、企業の利益主義を批判するはずのリベラル陣営まで、こうした政策を積極的に推進しているのはなんとも皮肉だ。

外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議
外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議(写真=内閣官房内閣広報室/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

「年収の壁」解消で労働力は補える

どうしても混乱が避けられない外国人の受け入れ政策を実施する前に、まずは十分に生かされているとは言えない国内労働者の雇用流動を促すことが先決だろう。日本の労働市場にはまだまだ「余力」がある。全体の実質賃金が下がっていることを説明するように、就労人口のうち最も多い事務系職種は、有効求人倍率が0.3倍という狭き門であり、余剰感すら強い。

11年の内閣府の調査では、社内失業者数は当時の労働者の8.5%にあたる465万人であり、現在では500万人を超えるという見方もある。また、伊藤忠総研は23年に「『年収の壁』で就業調整する非正規労働者は445万人、賃金上昇に応じた引き上げで労働力は2.1%拡大」とのレポートを発表。「年収の壁」の調整だけでも、外国人が現在働く労働力不足分野の大半をカバーできるとの見方も示されているのだ。

そして目下、AIによる事務職のリストラはすでにアメリカで苛烈であり、日本でも名だたる大企業を中心に黒字リストラが進んでいる。そこで注目されているのは「ホワイトカラーのブルーカラーシフト」だ。人材サービスのレバレジーズの調査では、ブルーカラー職への転職で約4人に1人、20~30代では約4割で年収が増加したという。しかも、このうちの約3割は100万円以上の増加だったという。ただ、このブルーカラー需要ですら、いつまで続くかは未知数になってきている。