「O型の血栓のできにくさ」の正体

ヒトの身体のしくみとして欠かせない血栓の形成には、先ほどの説明で挙げたフィブリノーゲン以外にも、多くのタンパク質が関係しています。これらは「血液凝固因子」と呼ばれ、現在では12種類が確認されています。

加えて、血液中に含まれる「フォン・ヴィルブランド因子(vWF)」というタンパク質も、止血に関係しています。vWFは、けがなどで血管が傷ついたときに、まず血管の内側に付着し、そこに血小板を集めて血栓をつくる働きをします。

じつはこのvWFは、血栓のできやすさに大きく関わるものなのです。一般的に、vWFの量が多いと血栓ができやすく、逆に少ないと血栓のリスクが下がることが知られています。

そして、O型の人は、このvWFの量がほかの血液型の人よりも少ないのです。平均すると、O型はほかの血液型(A型・B型・AB型)に比べて、vWFの血中濃度が25%程度低いとされています。つまりこの「vWF濃度の低さ」こそが、「O型の血栓のできにくさ」の正体なのです。

さらに最近の研究で、vWFの分解速度が血液型によって異なることもわかってきました。O型の血液中では、vWFが比較的早く分解されてしまうのに対し、A型・B型・AB型の人では分解されるスピードが遅くなります。

出血によって血栓ができたとしても、O型の人においては止血後すみやかにvWFが分解され、血栓が解消される、ということになります。さらに、vWFの合成スピードには血液型による差がないため、結果的にO型の人はvWFの量が相対的に少なくなるのです。

これに加え、O型の人は、先述した血液凝固因子の1つである「第Ⅷ因子」も、ほかの血液型と比べてやや少ないことが知られています。

ほかの血液型の血液に比べ、O型の血液では、第Ⅷ因子の量が70~80%程度とされ、こちらについても血液の凝固しにくさに影響している可能性があります。

血栓がつくられにくければ、たとえ新型コロナウイルス感染症に感染したとしても、血栓症になりにくい――つまり、重症化しにくいということです。これがO型の重症化リスクの低さの大きな理由といえるでしょう。

遺伝子レベルで判明した血液型の影響

新型コロナウイルス感染症における血液型ごとの傾向は、じつは遺伝子解析でも裏づけられています。

血液型でわかる 病気とケガのリスク
深瀬浩一『血液型でわかる 病気とケガのリスク』(宝島社)

ドイツの研究チームは、感染が深刻だったイタリアとスペインの7つの病院で大規模な調査を行いました。2020年に発表された研究では、呼吸不全を起こすほど重症化した1980人の患者の遺伝子情報について、「ゲノムワイド関連解析(GWAS)」を実施しました。

このGWASとは、人間の全ゲノム(遺伝情報全体)を対象に、特定の病気や体質に関連する遺伝子領域を探し出す手法です。この解析の結果、「3q21.31」と「9q 34.2」という2つの遺伝子領域が、重症化リスクに関係していることが明らかになりました。

このうち、「9q 34.2」は「血液型を決める遺伝子のある場所(遺伝子座)」そのものです。つまり、重症化リスクを左右する遺伝子の一部が、血液型と深く結びついていたのです。

この研究では、A型の人はほかの血液型よりも重症化しやすく(リスク1.45倍)、O型の人は重症化しにくい(リスク0.6倍)と、血液型によってリスクが違うことが示されました。

この結果から、新型コロナウイルス感染症に関しては、遺伝子レベル――つまり、生まれつきといえるレベルで「かかりやすさ」「重症化しやすさ」が決まっているのではないか、と考えられるのです。

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