免疫の暴走が起こり、血栓が形成される
しかし、免疫システムがウイルスを抑えきれないと、サイトカインが過剰に分泌され、「サイトカインストーム」という免疫の暴走が起こります。
サイトカインのなかでも「炎症性サイトカイン」は、患部の炎症を促して免疫細胞を活性化させますが、必要以上に分泌が続くと炎症が止まらず、身体に深刻なダメージを与えます。また、サイトカインストームが起こると、血液の凝固異常が発生し、血栓が形成されます。
その結果、心筋梗塞や肺塞栓、脳梗塞、下肢動脈塞栓などの血栓症が生じるのです。
2020年にイギリスの医学雑誌『ランセット』に掲載された仮説では、新型コロナウイルス感染症の感染初期の時点で、ウイルスが肺を通じて血液内に入り、血管を直接攻撃して血栓をつくる可能性が指摘されています。
これが事実なら、サイトカインストームが起きていない軽症段階でも、血栓による心筋梗塞や脳梗塞が起こり得るのです。
血栓ができないと出血が止まらない
ここまでの説明だと、血栓は「とても悪いもの」に思えるかもしれませんが、じつはそうとは言い切れないのです。もともと血栓は、出血した際に止血をするうえで欠かせないものの1つであり、血栓ができないと出血が止まらなくなってしまう可能性があります。
たとえば、血管が切れたり傷ついたりすると、血液中の「フィブリノーゲン」というタンパク質が反応し、「フィブリン」という糸状の物質に変化します。ここに血小板や赤血球が絡みついて血栓ができ、血管を塞ぎます。
つまり、血管の傷をカバーするために生じるのが血栓ということです。なお、皮膚表面にできるカサブタも、同じしくみでつくられています。
一方で、血栓が不要になったあとには、フィブリンの糸を溶かして分解し、血流を元に戻すしくみが働きます。そして通常は、この「固める力」と「溶かす力」が、絶妙なバランスを保っているのです。
ここまでであれば、血栓は「よい働き」をしているのですが、血栓が何らかの原因で大きくなったり、血栓が剥がれて細い血管へと流れていったりすると、血管を詰まらせ、心筋梗塞や脳梗塞といった重篤な病気を引き起こしてしまいます。

