「量」ではなく「質」を目指すべき
日本でも、京都市や富士山といった主要観光地を中心に、混雑や環境破壊の問題が深刻化しつつある。それもそのはず、実は日本における外国人の総宿泊日数は欧州で最大のスペインを上回っており、比較のために人口比で見てもフランスを上回る高水準となっている(図表3)。一段の観光客数の増加によって、そうしたマイナス面が際立つ懸念がある。
そこで重要になるのが、一人当たりの消費額である。日本政府の2030年の目標では、外国人旅行者一人当たりの消費額は25万円と、2025年の22.9万円から1割以下の伸びにとどまっている。仮に一人当たりの消費額が30万円まで増加すれば、訪日観光客数が5000万人でもインバウンド消費額15兆円を達成可能だ。いわば、「量」から「質」への発想の転換が必要なのだ。
加えて、既に指摘したように、円安に頼らずに一人当たり消費額を伸ばすことが重要となる。そのためには、インバウンド産業の高付加価値化と富裕層の誘致拡大が欠かせない。
観光客の一人当たり消費額を伸ばすには単価の引き上げが必要だが、単に価格を引き上げただけでは需要の減少につながりかねない。景観や文化、おもてなしといった「日本でしか得られない体験」を提供することで、値上げや円高に負けない需要を生み出すこと(=高付加価値化)が求められるだろう。
本当の「観光立国」になるために
訪日観光客に占める富裕層の割合の上昇も、一人当たり消費額を引き上げることにつながる。
JNTOの調査によると、100万円以上消費する高付加価値旅行者による2023年の消費額は、インバウンド消費全体の19.1%と2割弱を占める一方、訪日外国人観光客に占める高付加価値旅行者数の割合は2.4%に止まる。富裕層向けの施設やサービスの拡充、そしてPR活動による誘致拡大が必要だ。
日本政府としても、観光立国としての目標を「量」から「質」へと転換するべきではないだろうか。民間と一体となり、インバウンド産業の高付加価値化や富裕層の誘致拡大に取り組んでいくことを期待したい。


