「中国人観光客が減る=観光危機」は杞憂

もっとも、日本経済や観光産業全体で見れば、影響はそれほど深刻ではない。中国からの観光客の減少分の一部は、他の地域からの流入増加で相殺可能だからだ。

実際、2025年12月には韓国やタイなど中国以外のアジア諸国からの観光客数が大きく増加したことなどから、訪日外国人観光客全体では前年同月比+3.7%とプラス圏を維持した。JTBによる訪日旅行市場トレンド予測でも、2026年の訪日外国人旅行者数は前年比▲2.8%と、過去最高を記録した2025年の4260万人からは僅かに減少するものの、2年連続で4000万人の大台に届くと見込まれている。

観光地の過度な混雑が緩和することで、日本人の国内旅行が増加することも考えられる。株式会社マーケティングセンターによる日本人の国内旅行に関するアンケート調査では、外国人観光客の増加によって「宿泊数・旅行回数を減らす」と回答した人が8%存在した。

割合としては大きくないものの、日本人の国内旅行消費規模がインバウンド消費規模を大きく上回ることを考えれば、観光業への影響は小さくないだろう。観光庁の「旅行・観光消費動向調査」によれば、2024年の日本人国内旅行消費額は25兆1536億円に上り、インバウンドの消費額を大きく上回っている。

こうしたことを踏まえれば、日中関係の悪化によって中国人観光客が減少したからといって、日本の観光産業が危機に陥るような懸念は小さいと言えよう。しかし、先行きの観光業のリスクは日中関係の悪化とは別に存在する。それは、これまでの円安トレンドが反転し、円高に振れることだ。

真のリスクは「円安頼み」

日本のインバウンド消費は2010年台前半以降、コロナ禍を除き右肩上がりで増加してきた(図表1)。訪日外国人観光客数が増加したことによる影響が大きいものの、一人当たりの平均消費額も、2015年の17万6000円から2025年には22万9000円へと10年間で3割以上増加している。

【図表1】訪日外国人観光客数とインバウンド消費

しかし、実は訪日外国人観光客一人当たりの消費額の伸びは「円安」と「インフレ」でほぼ説明が可能であり、実質的な一人当たりの消費は伸びていない。一人当たり消費額から国内の物価上昇の影響を取り除き、ドル円相場と並べると、両者が概ね連動していることが分かる(図表2)。

【図表2】一人当たり実質インバウンド消費とドル円相場