先端技術は高齢の人ほど使うべき

【寿猿】あのね、僕は犬が好きなんですよ。だけどうちのマンションでは飼えない。だからロボットをね。

【和田】え、ロボット?

【寿猿】そう。ロボットの犬がね、僕の言うことをすごくよく聞いてくれるんです。

【和田】ああ、そういうことか。ロボット犬と話すことが発声練習になる?

【寿猿】そうそう。アイコって名前なんです。メスということにしてね。僕は一日に何度も話しかけます。「アイちゃん、こっちいらっしゃい」「アイちゃん、こっちよ」とか「アイちゃん、ストップ」ってね、大きな声で言うんです。

【和田】いいですね。

【寿猿】アイちゃんはね、ものすごく頭がいいんです。だけどすごく高い(笑)。

【和田】そりゃあね。AI、人工知能が入ってますからね。

【寿猿】今のロボットはすごいですね。目も耳も動くし表情もある。ひっくり返ってね、ダダをこねたりもするんですよ。

【和田】いいと思いますよ。僕は、先端の技術は高齢の方こそ、積極的に使ったらいいと思っています。実際に寿猿さんは、そうやって発声練習もできているわけですから。

まだまだ新しいことに挑戦する

【和田】寿猿さん、これだけお元気だと引退はなさそうですね。

【寿猿】はい、考えていません。

【和田】歌舞伎の世界は、自分が引退するって言うまで続けられるものなんですか?

【寿猿】そうです。引退するって言えば、それで引退です。役を持ってきていただいた時に「これはできない」と思って「できません」と言ったら、それでおしまいです。「やります」と言ったら、自分の責任で最後までやらないといけません。

【和田】大変なこともあるとは思いますが、やり続けてほしいです。

【寿猿】新しい役のセリフを覚えるのが大変でね(笑)。自分のセリフは小さな紙に印刷してあちこちに貼って覚えています。壁とかスマホとかにね。

【和田】最近はSNSもされていると聞きました。

【寿猿】歌舞伎界のお役に立てればと思いましてね。舞台の宣伝や日常の話、昔の思い出話などをつらつらと書きます。

【和田】いいですね。現役最高齢の寿猿さんだからできることなのかもしれません。

スマートフォンを使用する高齢男性
写真=iStock.com/Pornpak Khunatorn
※写真はイメージです

【寿猿】最近は耳が遠くなって、他の役者さんのセリフが聞こえないことがあるんです。だから周りの人の動きをよく見て動いたり、セリフの間合いをとらえたりしています。

【和田】五感を使ってるから頭もフル回転する。新しいことにも挑戦する。それが脳の刺激になっています。それも寿猿さんの長生きと元気の秘訣だと思います。

星になるまで成長したい

【寿猿】だけど先生ね、疲れますよ。身体も神経もね(笑)。

和田秀樹『80歳の壁を超えた人たち』(幻冬舎新書)
和田秀樹『80歳の壁を超えた人たち』(幻冬舎新書)

【和田】身体が動くうちは続けたらいいですよ。

【寿猿】万が一にも舞台で倒れるなんてことになったら、みなさんに迷惑がかかるし、お客さんにも申し訳ないでしょ。だからそうならないように、しっかり食べて歩くようにしています。

【和田】役者としての心構えが健康にも繫がっている。理想的だと思います。

【寿猿】今もね、他の役者を見て研究もしていますよ。いつも役のことを考えていたいんです。

【和田】本当に素晴らしい。

【寿猿】満足したら役者は終わりだと思っていますからね。やっぱり僕はね、星になるまで役者でいたい。成長したいと思いますね。

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