杖は使わない、自分の足で歩く

【和田】お住まいは?

【寿猿】高齢者用の賃貸マンションです。僕の部屋はワンルーム。朝10時になるとね、ブブーッと鳴って「星になってませんか」と確認の電話が来る(笑)。

【和田】安心できますね。好きに外に出てもいいんですか?

【寿猿】制約などはありません。僕が言ったことに応えてくれます。夜なんかもね、僕が遅く帰るとドアを開けてくれます。ちょっとおかしいなと思ったら待っててくれる。

【和田】いいですね。

【寿猿】眠る時はカーテンを少しだけ開けておきます。すると朝日が入って目が覚める。そうやって自然に起きるようにしています。

【和田】自立した生活です。歌舞伎の役者さんは、足取りも大事ですよね。

【寿猿】だからね、僕は普段、杖を突かないんですよ。杖を突くようになったら役者をやめようと思うの。

【和田】まだまだ大丈夫ですね。

庭を歩く年配の女性
写真=iStock.com/Hanafujikan
※写真はイメージです

【寿猿】僕の住んでいるところは駅までは15分くらいかかります。パンを買いに近所の商店街に行ったりもします。うちの高齢者用マンションに住んでる人はね、杖を突いて歩く人が多いんです。だけど杖を突くと、こんなふうな歩き方になるでしょ(足を引きずるような歩き方を実演)。

【和田】そうですね。

【寿猿】また舞台の話になるけどね、これだとダメなんですよ。舞台で歩く時はね、たとえ杖を突くとしてもね、こういうふうにオーバーに歩くの(足音を立てた歩き方を実演)。そうしないと舞台が死んじゃうんですよ。

【和田】舞台映えする動きが大事なんですね。その動きで舞台が映えるだけでなく、寿猿さん自身も元気でいられるのだから、一石二鳥ですね。

声をださなくなると一気に老け込む

【寿猿】とてもありがたいことにね、「寿猿さんの舞台を見ると元気が出ます」なんて声もかけられるんですよ。

【和田】寿猿さんは姿勢もいい。背筋がピッとしています。

【寿猿】肩甲骨って言うんです。ここをグッとね、後ろへやるんです(実演)。すると姿勢が真っ直ぐになります。やってみるとわかります。

【和田】(実演して)本当だ。姿勢がよくなりますね。胸も開くので、呼吸も深くなるから健康にもいいでしょうね。

【寿猿】役作りにもいいんですよ。若い人のようになります。とはいえ僕はもう、若い人の役はあんまり回ってきませんけどね(笑)。

【和田】今はどれくらいの頻度で舞台に立つんですか?

【寿猿】2024年に脳梗塞をやりましてね。今はなんともないんですけど、また倒れるといけないからと、少し大事をとっています。2025年は1月と7月。次は10月に出るんですよ。

【和田】出る時は毎日?

【寿猿】はい、毎日です。

【和田】稽古は今でも毎日するんですか?

【寿猿】いえ。本格的な稽古は舞台が決まってからです。10月に舞台がある場合は、全部の稽古は9月20日過ぎくらいからです。特別な役の場合は、個人的に、その先輩に習いに行きます。

【和田】先輩いないでしょ(笑)。

【寿猿】(笑)。

【和田】発声の練習はおうちでやると聞きましたが、どんなことを?

【寿猿】特別なことはやっていません。だけど寝てる時に大きな声を出して、驚いて目覚める時がありますよ(笑)。

【和田】いいですね。やっぱり声が出なくなると、一気に老け込みますからね。だから毎日、声を出してたほうがいいと思います。