アンチ・エイジングはいらない

【帯津】私はね、いつでも死後の世界に呼ばれたら行こうと思い始めたんですよ。そしたらフットワークもよくなって、日々の生活が少し充実してきた感じがします。

【和田】生き方が軽やかで素敵です。例えば同じく東大の医学部を卒業しても、教授になるために競争とか蹴落としに明け暮れる人がいます。

【帯津】多いですよね。私はそういうのは興味がなかったけど。

【和田】僕もです。仮に東大教授になれても65歳とか70歳で引退するわけです。だったら出世にこだわっていびつな人間関係の下でストレスを抱えて生きるより、帯津先生みたいに毎日をときめいて生きる。そのほうが年をとってからもハッピーだと思うんです。

【帯津】世間ではよく「アンチ・エイジング」なんて言うでしょ。だけど年齢には抗えない。老化と死っていうのは神の摂理みたいなものですからね。

【和田】必ずやってくる。

【帯津】はい。だから私は「ナイス・エイジング」を目指そうと言っています。老化と死があることを認めてしまうんです。受け入れたうえで、老化に楽しく抵抗しながら、自分なりの養生を果たしていく。そして最後は「生と死の統合」を目指す。死後の世界に期待するわけですよ。

【和田】生と死の統合?

【帯津】はい。人生の幸せな後半生ではナイス・エイジングを毎日心がけ、ときめきをキャッチして生命を躍動させる。エンジンをブブーンとふかせば、この年齢でも健やかで活気に満ちた毎日を過ごすことができます。

【和田】なるほど。晩年にエンジンをふかすわけですね。

【帯津】そう! そして、あわよくばその勢いのままあの世に乗りこんでいく(笑)。人生の終わりにエネルギーを減らすのではなく、逆に増幅していく。そんなふうに私は考えているんですよ。これが生と死の統合です。

病気を治すのは医師ではない

【和田】先ほどクリニックに美人の女性が2人訪ねてきました。

【帯津】患者さんです。もう一人は彼女のお友達かな。

【和田】先生と笑顔で手を振り合っているので、親しい友人みたいに見えました。

【帯津】私はね、患者さんと心を通わせることが一番大事だと思っていましてね。だから白衣も着ません。診察の妨げになると思ってるんですよ。医者の権威をまとうより、普段着にサンダル履きのほうが親しみやすい。

【和田】素晴らしいですね。

【帯津】医者と患者は同じ病に向き合う仲間という意識でね。そのほうが自然治癒力も上がると私は思っているんですよ。

【和田】私も精神科医なので、それはよくわかります。

【帯津】そう言えば、和田先生、選挙に出たそうですね。

【和田】いえ、選挙に出たわけではないんですけど。「幸齢党」という政党を作りましてね。選挙に出るつもりだったんですけど、立候補者の人数が足りなかったので、今回は東京でひとり応援させていただくのに留まりました。まあでも、1回目は惨敗でした。高齢者の幸せを目指すので「幸齢党」と名付けました。

【帯津】そうでしたか。高齢者の幸せを目指すってのはいいですね。医者の私が言うのも変ですが、病院へ行ったからといって病気が治るわけではないですからね。病気を治すのはやはり、もともと人間が持っている自然治癒力です。そして自然治癒力を高める最大の原動力はときめきです。ときめいている患者さんは、ほぼ例外なく症状がよくなっていきますからね。

ドライブ旅行を楽しむ老夫婦
写真=iStock.com/Jacob Wackerhausen
※写真はイメージです

【和田】まったく同感です。それなのに現実は免許の返納を促したり、働く意欲と能力のあるお年寄りを悪い労働環境で雇ったりする。高齢者の割合が増えているんだから本当は現役世代との「共生社会」を目指すべきなのに、逆を行ってるんです。