非正規雇用対策もひきこもり救済も焼け石に水
さて、ここまで対策を打てば、もう外国人など不要ではないか、という声も聞こえてきそうですね。国政政党でも、「不本意ながら非正規となっている人たちを正社員化して対応すべきだ」などという話をする人がいます。雇用の現実が全くわかっていない妄言です。
まず第一に、不本意ながら非正規となっている人の数は思うほど多くはありません。世の中には「非正規雇用2100万人」という数字が一人歩きしていますが、この4分の3に当たる1500万人強が、主婦・高齢者・学生のパート労働なのです。
主婦は家事・育児があり、高齢者は体力的な限界、学生は学業があるため、いずれも正社員雇用を望めない状況。そのため、不本意の非正規は、2024年時点で180万人(総務省「労働力調査<特別調査>」)、非正規雇用者の8%強にとどまります(図表1)。
※編集部注:外部配信先ではハイパーリンクや図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はPRESIDENT Online内でご確認ください。
加えて、非正規の人を正社員化しても、それは雇用形態が変わるだけで、働いている人の数は全く増えません。何より、足りないのは正社員ではなく、むしろ非正規領域の人なのです。不本意の非正規を正社員化しても、何の足しにもならないでしょう。
「ひきこもりの就労促進をしてはどうか」という意見もあります。確かにそれは重要なことですが、その数は2022年の内閣府の調査で全国に146万人ほどに留まります。仮に最良の施策で、彼・彼女ら全員が就労したとしても、全く数的に足りません。このあたりのことを、データでしっかり確認しておきましょう。
図表2は年度ごとに、22歳になる人口と65歳になる人口を示したものです。前者が新社会人、後者が雇用終了者と見なすと、このギャップが「単年度に発生する労働力の欠損」となります。2025年だとこの労働力欠損は30万人を超えた程度。
それが2030年までほぼ一直線で伸びて60万人となります。これでもまだ序の口で、2034年には80万人、2038年には100万人を超える。「ひきこもり者」146万人全員が働いたとしても、物の数ではないことがよくわかるでしょう。
これは、単に入職世代と退職世代の人口差を示しただけのものです。このほかに、①65~74歳の前期高齢者、②主婦パート従事者、という2つの補完層の人材が急速に細っています。
「かつてない」国難に対峙しているのは間違いありません。日本国を愛してやまない保守政党の方たちこそ、「外国人を排除しろ!」と叫ぶ前に、現在の日本の状況を考えてほしいところです。
「クルド人の不法就労で日本人の給与が下がった」は嘘
外国人の就労に反対する意見としては、「不当に安い給料で外国人が流入すると、日本人の賃金が下がる」という意見があります。ネット論壇でも有名な識者が、しきりにこの話を語りますが、こちらも、知識不足からくる誤解だといえるでしょう。
まず、現在、特定技能資格で外国人雇用が認められる領域は、「人材不足が深刻な産業分野」に限られます。おおむね、有効求人倍率が2倍を超える領域でしょう。
図表3をご覧ください。2024年の有効求人倍率ですが、この中の黒色で示したのが現業職、灰色で示したのがホワイトカラーとなります。
有効求人倍率3倍を超える職務はいずれも現業職ばかりですね。2倍以上に広げてみても、ホワイトカラーからは唯一、営業職が入るだけです。
これほど人材が逼迫している分野だと、すでに書いた通り、放っておいたら無定見な採用競争となり、過度な企業淘汰が起こり、社会全体が困ることになるでしょう。
さて、クルド人の不法就労が問題となっている建設解体作業ですが、本当に作業単価が下がっているのでしょうか。たとえば、8月10日付朝日新聞では、「空き家などの住宅解体費が2024年度に1戸平均で187.7万円となり、前年度から7%増えた」とあり、その中央値は「20年度の140.9万円から24年度は180.0万円」と27.8%も上昇しました。
有効求人倍率が9.38倍にもなる業界だと、ちょっとやそっとのことでは単価ダウンなど起こりはしません。
特定技能資格の査証で外国人材が就労可能な範囲は、随時見直しが施されています。有効求人倍率2倍を軸に、もしもこの線を割るような状況になれば、早急に対象分野から外す運用を行えば、単価ダウンや日本人の雇用に影響を及ぼすことなどありえないでしょう。



